ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その6。

前回何とかボツワナの話を再開し、この勢いで書ききりたいなあ…と思ってたらまた一か月経過した(汗)。書いてることに気付いてる方とかいるかな?と思いきや意外と「楽しみにしてます」なんて有難いお声掛けもいただいていたので、流石に尻切れトンボにはできないなと。ということで(本来これが本題の)今回のボツワナの仕様とか作った際に力を入れたりこだわったり苦労したりしたポイントのお話です。

・箱サイズと価格、カートン入数
・前回版を真面目に見つめ直してモチーフの再解釈と適度な明瞭化
 ・動物コマの種類、色、形、並び順
 ・ボードの新規導入、形状、製法、表示
 ・ラウンドを「ツアー」と呼ぶことにした(gooさんからのアイデア)
 ・プレイヤーの駒を自動車型にするかの検討と見合わせ、パッケージやボードマスでの表現
 ・箱裏文のまとまり

と、チェックポイントはこんな感じですかね。

・箱サイズと価格、カートン入数
NGOとしての確認を含んだ話になりますが、まず「箱は特に他の理由が無ければできる限り小さく」これは私たちがボードゲーム製品を作る時の大原則です。大きい箱を所有するという満足感や、箱が大きいと何か重厚で壮大な本格作品なような気がするという(悪く言ってしまうとこけおどし的な)心理的なアピールを抜きにして実用で考えた時、小さい箱に必要十分なゲーム用具が入っているというのは沢山メリットがあります。まず何といっても輸送費用。そして私たちの倉庫のスペースも、購入された方の自宅での保管スペースも、全部カットされます。どこかに持って行って遊ぶような場合の持ち運びも便利。

元のボツワナはFred社の「ロール・スルー・ジ・エイジズ」の箱サイズを踏襲していて(当時RTTAも売価3600円とリーズナブルでした)、既存の大箱ボードゲームの4分の1程度のサイズで中にはしっかり良いゲームが入ってるというコンセプトは私たちには非常に「わかる」ものでした。そのサイズが良いならできるだけこちらでも合わせていこうと、「古代ローマの新しいゲーム」「フォルム・ロマヌム」「モダンアート」など、できるだけ合わせて日本語版をリリースしていきましたね。

で、今回のボツワナなんですが、先にある想定として動物フィギュアをやめて良い感じの木製コマで…というのを決めていたので、「さらに小さい箱でも入れられるよな」ということと、「できれば元の3500円より下げるのが良いだろうな」というのがありました。昨今のボードゲーム価格の(円安や製造コスト増要因からの)価格上昇を考えると「元サイズ・木製コマ・価格3500円」も全然常識的な範囲なんですが、NGOでやってきた出版姿勢に照らすと小型化と価格下げを実現したい所でした。私の個人的なこだわりなのか、NGOに期待されてる大切な部分なのか…というのは判然とはしないのですけどね。でも自分達にとっても購入される方にとっても、製品としての輪郭をくっきりさせる意味はあると思っています。

と、実際には一旦「箱小型化・木製コマ・価格下げ」の方向で検討を始めても、実際に製品仕様を固めようとしていくと「小型化はできるけど価格下げられんなコレ…」とか、「意外と小型化が上手く行かない…」とか、割とすぐ袋小路に入って当初の構想通りできていかないものなのですけどね。私たちの場合数多くボードゲーム製品を作ってきた(成功も失敗もたくさん積み重ねている)ので、過去に作ってきた製品のパーツやその際のコストや安定性や…という所を手掛かりにして新しい物を作っていきます。「できるかわからない、どうなるかわからない、出来も費用も皆目見当付かない」といったようなパーツや趣向も、その時作っているゲームの魅力を広げる上で絶対に不可欠だということであれば導入に挑戦しますが、大概それは本当に難しいです。ぼやんとした、雑に想像したリターンの為にはリスクは取らないよと。

ということで元のボツワナより箱の小型化を目指した時、私達の手近なターゲットとなったのが「探偵稼業」でした。探偵稼業と同寸法ですと箱やカートンの体積が既にわかっているので、明らかにできる数字の前提が増えるのです。ちなみに探偵稼業の寸法がどこから来たかというとその前に出した「ビザンツ」です。ビザンツについてはもとは(確か2008年頃でした)アミーゴ社から出ていてニムト同様の大定番カードゲームサイズでしたが、再版したラウタペリ社(フィンランドの会社)と日本語版出版で合意した際にあちらがサイズを決めていて、それが探偵稼業と同サイズ。ビザンツは印刷もあちら担当という意向でこちらもそこは飲んだ所だったので、ビザンツの輸入と共にNGOの箱サイズは1個増えました。その後再版したバントゥとかはこの底面をもとに薄くしたもの。今回のボツワナを出すにあたっては「より縦長な交易王サイズというのもあるにはある」と一応一旦は検討したのですが、割とすぐに「いや探偵稼業か元のままのサイズかの二択だな」となりました。これは内容物のサンプルを作って入れ込み、どちらがより都合良さそうか確かめてみた結果です(駒は3Dプリンターでサンプル製造します)。あとパッケージを想像した時の、実現できそうな販売価格とパッケージの印象のつり合い。これに伴い、カートン入数は今回24個に決めました(探偵稼業は36個)。という話は一般のプレイヤーの皆様には直接関係無い部分かとは思いますが、商品の浮沈には無視できない部分です。商品の価格と箱サイズとカートン入数とカートンサイズというのは直接関係しています。カートンサイズは一つにはカートン1個1個の取り回し、輸送や保存の利便で決めることになるのですが、同時に販売の際の単位でもあります。ある程度以上の規模を持った業者さんはゲームをカートン単位で仕入れているので、カートンに入っている個数とカートン1つあたりの価格というのがちょうどいい所になっているかというのも同時に気にしているのです。箱サイズを小さくすれば取り回せるサイズのカートンに入る部数は増えるのですが、さてそこで増やせるだけ増やすのが正解なのか?それともカートンあたりの価格をある程度同じあたりに合わせるのが正解なのか。NGOでは箱の重量体積の適正を目指しつつも、カートン辺り価格をある程度決まったレンジに収まることを最優先に考えているのが現在の方針。ボツワナの販売価格は税抜2700円、24個入で税抜64800円…という感じです。

・前回版を真面目に見つめ直してモチーフの再解釈と適度な明瞭化
今回ボツワナを改めてリリースするにあたり、私が避けて通れないと考えたのはここでした。…ホントに避けて通れないのか?と問われると、ちょっとボンヤリすれば避けられないことも無い気がするのですが、いやここはちゃんとせんとなと。ボツワナは2013年頃にFred社が出したフリンケピンケの新たなバージョンで、おそらくはファミリー層をターゲットにしていたものだった。動物のプラスチックフィギュアを安価に得たことに着想を得たのではないか…という推測が立つ。実際にその動物フィギュアは魅力的である程度以上の好評を博した。NGOの当時の日本語版出版はその忠実なローカライズでほぼ動かす幅は無かった、と。

元を正せば、今回は違うわけですよ。Knizia GamesとNGOが新たな契約を結んでいますから、私が希望すればボツワナでは無いフリンケピンケの新版を出すことは可能だったのです。トールにもロコにも、他の新しいモチーフの何かにもできた。でも今回もボツワナにしよう、と私が判断したわけです。現在のボツワナ英語版がアートワークそのままに「ワイルドライフサファリ」と改題しているのにです(あちらは何で変えたんだろう)。

何で今回も「ボツワナ」にすることにしたか?それは10年前とは言えNGOがボツワナのローカライズをしたことで、少なからず国内でこれを流通させ続け、ある程度以上のご好評をいただけ、終売した現在も遊び続けていただいている。自分達の過去のアクションを経て、このゲームは日本で「ボツワナ」になった側面があると思うからです。元はフリンケピンケだったよとか、こういうカジュアルなゲームを遊ぶ現場ではあまり重要ではないでしょう。もう一旦ボツワナで落ち着いた物を明確に強い理由なく何となく動かすのは、あまり望ましくないなと。絶対変えた方が良いはずだという代案を私自身持ってなかったのもあります。だからもう一回ボツワナで行こう、今度は自分達が仕様を全体的にコントロールできるボツワナでと。

と、そうなりますと課題として浮上してくるのが…「このゲーム、そもそもなんなん?」という問いです。これはKniziaさんがゲームをルールから着想していて、テーマについては出版社に任せるケースが多いからで、面白いゲームのルールなのだけど、これをどんなゲームの競争に見立てようか?というのが後付けされていることが多いのですね。この点で言うと元のフリンケピンケのアブストラクト、でもこれは株かな…という抑え目な実装というのは適切ではあった。でも商業的には地味過ぎた。だからFredがボツワナにした。わかる。それで広く、特に低年齢の方にも遊ばれるチャンスがあるようになっている。だから今回もボツワナで行く方が良いと思いました。で、Fred版の正直動物フィギュア頼りでゲーム自体はぼやんとしてると言わざるを得ない実装に、いくらかは改良を加えたい。NGOオリジナル版として出すからには。ということでした。完璧には無理だとは思っている。でも「なんかそんな感じもするね」という自然さ、納得感、情感を強化したいと。整合性ではないのだけど、辻褄が合ってるように見えなくもないゲームの姿。これはまあ、ドイツゲームの平均的な態度ではあるのでしょう。再現と駆け引きやり取りの面白さなら後者優先。前者をどの程度おざなりにするかは人による、全然うっちゃってもアブストラクトにしても後者が素晴らしければ賞賛される、でも前者の質も高めればそれはそれで賞賛される。そういうジャンルなので。

ということで、ボツワナというゲームを見直して改めて出す主体となろうとした時「これは多分こんな感じのゲームなのだと思っています」という立場を可能な限りははっきりする(明示しなくても良いけど姿勢としては持っている)方が良いと。この課題に本格的に取り組んだのは、イラストレーターのgooさんに依頼をお受けいただき、立川にご足労いただいて具体的なオーダーを出すにあたってでした。

…長いですね。全然まだ終わらなかった。結局また次回に続きます。

ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その5。

さて、やっと実際に出たボツワナのお話…余りにもお待たせしました。と言いつつ、書くことを構想してたらまだ具体的な製品の話に行かないかもですが(笑)。
2022年版ボツワナ…とか言いつつもう2023年も10月半ば!海外の新旧パブリッシャーの動向を見聞きしていると…(というほど一生懸命チェックしているわけでは全然無いですが)、リリースペースを中心にびっくりする程の活動量を見せている所もあれば、「終わった?」と思いきや実は動いている、みたいな所もあり(ボードゲーム新規出版に関してはウチもですね)、ホント生き方様々になってまいりましたねえ。私どもも、今の姿勢を踏襲して引き続きパブリッシャーで生きていければ良いんですけども、さてどうなりますか(笑)!いつの世もボードゲーム出版仕事にするなんてムズいですが、コロナ来てからは輪をかけて激ムズですね。

ニューゲームズオーダー創業から数えても実に15年ボードゲーム出版やってますと、自分達の中で一旦「これはこういう風にする」「こういうことはしたくない、しない」「懸念もあるがこれはチャレンジしよう」…と、ボードゲーム製品作りについて答えを出した部分が色々とあります。もちろん時の流れや周辺環境の変化に伴って「いや、これは対応しなきゃだよね」と変わっていくこともあるんですが、やっぱり動かしたくない所は明確。…そしてその明確な部分と商売繁盛とは割と合致しないもんです、世の常ですが(笑)。

自分達が仕事を始めた2010年代とこの2020年代の違いと言えば、2010年代はボードゲームを自前製造して在庫抱えて日本で売るなんて、いかに界隈では名高い傑作名作のローカライズに成功したとしても行っちゃえば酔狂の類の所業と見なされてたと思います。もちろん「そりゃそんな事を成功させる会社が現れたら良いよね」ということでボードゲーマーの皆様には平均すれば「ちょっと無理じゃないかとは思うけどまあ頑張れ」くらいでご反応いただいてたかと思います。弊社以前にもちろんメビウスゲームズさんがサンファンですとかQ-JETですとか日本語版を実験的にリリースされていた部分はありますが、NGOを始める際にご挨拶がてらアドバイスをいただきに伺った際、メビウスさんの自社出版の状況を聞いたところ「やっぱり色々簡単じゃないですよ」というお話をしていただいたおぼえがあります。当時ドイツボードゲームを仕事で、となると基本海外パブリッシャーや問屋から各タイトル50~200個くらいを仕入れて自前の和訳付けて販売/専門店に卸す、が最大限で、出版はその脇で実験段階、というレイアウトでした。

と、今回の話は関連するけど直接この話題では無いのでその後の展開を言うと、2010年代前半~半ばにかけてじたばた日本語版を1000部ずつとか出していっていた所に2015年辺りで潮目が変わり(うちで言えば枯山水が売れ)、あ、これは行ける!と、今振り返れば数年間の理想的な時代がやってきて、いよいよ順風満帆、良いじゃないか!となった所に2020年にコロナがやってきて色々頓挫したという。ウチもなったし割合皆さんなったと思います。コロナ来たての2020年こそおうち需要みたいのに束の間の生きる道を感じた売り場方面からの特需が起こり意外と売り上げは保ったのですが、その後はうん無理だ!と。コロナだけでなく、ここに来て(おそらくボードゲームの知名度拡大からの新規参入拡大、という流れが続いたことや、ボードゲームカフェなど「買って自分の物にしなくてもボードゲームを遊べる、シェアする選択肢がある」ようになったことから)ボードゲーム出版も自分でやりたいという様々な業者さんが増えたことも一社一社の出版事業が難しくなる元だったろうと思います。

2010年代の、ほとんど担当者が居なくてやりますと手を挙げただけで歓迎して貰えた時代から、2020年代のボードゲーム出版を仕事にしたい人が沢山居て、「別に自分が敢えてやらなくても売り場に多種多様なボードゲームがあふれる」時代への変動があったと。現在に至ってもなお「いやそれでもNGOにこそボードゲームを出してほしい」と、私たちのチョイスとかクオリティ、考え方に価値を置いていただいている方からのお声掛けがあるのはたいへん嬉しく思っています。その気持ちにできる限りお応えしたい気持ちはある。しかし大状況は、乗車率パンパンの満員電車に乗り込むアクションになってるような…という思いもぬぐえない。エリアマジョリティわかる人なら常識だと思いますがそれって基本線はやらない方が良い動きなんですよね。駒1個あたりから獲得が期待できる勝利ポイントが明らか目減りますので。ボードゲーマーの端くれなので、その皆が見つめてるマス目にズンドコ持ち駒投入するのに気が進まないです(笑)。あとその物量戦で勝てるような駒を持ち合わせてないのも勿論です。

そこで今回のボツワナ(ようやく帰ってきた)ですとか、最近出しているNGOが出版しているゲーム(もそうだし、ゲーム書籍も、物撮りノートも)。それは「この色々あふれ返った2023年でも、まだまだ絶対出した方が良いよね?」と思える物を出すという事です。どれだけ点が取れるのかというのはありつつも、比較して空きマス、すいてるマスだと。とりわけボードゲームに関しては、私たちが意識している従来のドイツボードゲームの愛好者層の外に向かって、ドイツボードゲームの面白さが巻き起こる可能性にプラスをもたらせてると思える物に優先順位を持っていこうとしています。ご存知いただいている方も(もしかしたら期待していただいてる方も)いらっしゃるかと思いますが、「愛好者向け」「長時間」「大箱」のボードゲーム出版でも過去には何度か頑張らせていただきましたが、少なくとも私たちが丸ごと抱えて出版という形式では、今はやることはないかな~と。商業的にもリスキーだし、多くの目ぼしいゲームについては誰が出すかの競争も巻き起こってるでしょうし。言葉にしてしまえばこれはドイツのファミリーゲーム出版の基本の基本なのかなと思いますが、少なくとも2010年代後半から2020年代にかけてこのファミリーゲーム、ファミリーストラテジーゲームの出版が「商業的に美味しくない」という一旦の結論(とヘビー・ライトへの出版二極化)を見ました(一旦の、としておきたい)。この我々のホームである所の真ん中あたり。儲からない真ん中あたり。私たちは真ん中あたりだと信じている、端っこかもしれない領域。ボードゲーム出版、ここで仕事にしたいですなあ。この領域は廃墟になったけど他で仕事になった…という未来、生き延びれるかもしれないけどそんな満足できないんですよね(笑)。

と、具体的なボツワナの話には行きませんでしたが(そして繰り言かもしれないですが)書くべきことは書けた気がするので、次回もう一回、今度こそボツワナのディティールの話を書いて締めることにしましょう。ファミリーゲームってこんな感じかな、と思いながら作ってるということで、一応その補足説明です。

ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その4。

さて、だいぶ間が空いてしまいましたがボツワナの話を再開しましょう。今回は結果ボツになった案のお話。

【ボツワナ22年版の製品仕様が決まるまで】
新たにリリースした22年版ボツワナをきっかけにゲーム作りやデベロップメントの話…ということでスタートしたものの、書き始めるとこの話も、それならあの話も、となり(笑)、ようやく今回のゲーム製品としてのボツワナの話に入ります。という所でまたしても話すべきかどうか…という小さからぬ要素があるのですが。実の所、今回のボツワナを出すにあたっては、実際に出たボツワナとは相当違うアイデアについて頭に昇らせていて「ダメ元で」と動いてみてもいました。それはあるIPのイラストを使ったボツワナをリリースできないかな、という構想でした。

分かり易くマンガ、アニメのキャラクターでは無いものの、昔から世の中に確実な馴染みはあって、最近特に展開が目立っていて好感度も高く、明らかにボツワナと親和性が高いなあ…と感じていたあるIPがありました。ボツワナというゲームの社会の中で置きたい立ち位置を考えた時、結び付けられたら大きなチャンスがあるのではないかなと思い至ったんですよね。「流石に無理かな」とは思いつつも一方「誰もテーブルゲーム出版に使うというオファーはかけていないのではないかな?」と思って権利元に問い合わせ、担当者さんとコンタクトを取ったりはしました。結果的には新規のコラボ先を増やす予定が現状無いので、という理由で断られたのですが、とにかく聞くだけは聞いてみた、という動きはしました。これを聞くにあたってはKniziaサイドにはこういうものとコラボしてのバージョンの出版はあり得るのか問い合わせて許可をもらったり、というような事前の準備はしたので、実現できたら良かったなとは思うのですけどね。

終わった話ではあるわけですが、何でそのIPの力を借りると良いのではないかと思ったかと言えば、それは自分がボツワナというゲームをどういう風に世の中に出していきたいかということを考えた時に親和性が高い、シナジーが期待できると思ったからです。まず「ファミリー」を想起させる、好かれて嫌われないキャラクターなのが良かった。そして認知度や好感度から本来遊ばなかった人がボツワナを遊ぶようになる突破口が作れるかもしれない、ということ。実現できなかったわけですが、私たちがボツワナを新たに世に出すうえで、大切にすべきことは何なのかということを本気で捉え直す良い機会にはなった形です。

さてそれではどうしようとなった時、「ペンギンパーティでイラストをご担当いただいたgooさんに今回お願いしよう」という発想に至るまでにはそう時間はかかりませんでした。動物のゲームで、一般向けのファミリゲームで…となった時、先行して成功を収めているペンギンパーティの形を(gooさんの新たな絵柄で)もう一度やってみたいな、という点と、gooさんとペンギンパーティ以来お仕事をさせていただいてないため、という点もありました(前回はタンサンさんに仲立ちしていただく形だったため直接コミュニケーションを取ってはいなかったのですが)。これから仕様を決めていく…というなかでも「従来のプラスティックフィギュアは入れない」ということだけは実質先に決まっていたので(今やったら簡単に5000円以上のゲームになってしまう)、そうなると「イラストの方からの魅力強化+新版の方向性の打ちだし」というのをその分やってパワーアップを図りたい、というのがお願いした一番大きな理由でした。前回の英語版の各種リソースをそのまま使ったローカライズとは違い「自分がプレイヤーの皆さんに描いてほしいボツワナというゲームのプレイのイメージ」を作れる/作らなければいけない。「フィギュアでなければ…大型の木製コマが良いだろうな」とうっすらイメージしていく中で、その木製コマを良い感じに作り、その木製駒と良い地点で集合できる方向性のイラスト。gooさんなら描いていただけそうだ…と思いました。もちろん実現の上で様々なことをすり合わせる労力は双方に起こるだろうと思いましたしそれがどれだけのものになるか…という心配は常ながらありましたが、ただ乗り越える価値はあるだろうと。初めてお声がけした所有難いことに前向きなご返答がいただけ、一回ご足労をいただいてのミーティングを経て着手していただくに至りました。

…という所で本日はこのへんで。ようやく実際に作ったボツワナの話を次回致しましょう。

ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その3。

【ボツワナ2022年版出版の理由】
ということで、ようやくボツワナの話に入ります(笑)!私吉田のやるボードゲーム作りの話なんて、ホントに紐解いてしまいますと30年近く遡っての動機の話に関連してしまうので、取り留めも無いなと改めて思ってもおりますが。でも読みづらくても(言ったらどういう気持ちでやってきたのか憶えている内に)遡って書き連ねておこうと思います。

ボツワナ2022年版ですね。そもそもニューゲームズオーダーとボツワナの関係の元をたどると、グリフォンゲームズ、社名で言うとFred Distribution社との縁が2010年頃(つまりNGOが始まったころ)ロール・スルー・ジ・エイジズ、フォーセール、ハイソサエティの輸入販売→日本語版出版のお誘いから生じ(というかFred社からの誘いが無ければ具体的な出版物のアテが無かったのでニューゲームズオーダーはメーカーとしては始まらなかったかもという感じだったのですが)、ボツワナはFredがハイソサエティやフォーセールの次くらいにリリースを予定していたゲームでした。NGOは当初からパブリッシャーを志向しつつも主には米Rio Grande Gamesから輸入した当時日本で流通しておらずニーズがありそうだった英語版ボードゲームの卸で何とか会社をスタートしましたので…メディチとかトーレス、魚河岸物語、クロノスとかですね(今思い返しても良いゲームをチョイスをしていた、我ながら必死だったんだろうな~当時…)。

で、2012年にFred社から「ボツワナ」を出すけどどう?と。ボツワナも最初は英語版の輸入販売でした。数百部をそこそこのスピードで完売できたのだったと思います。では、それを次は日本語版でまとまった数どうかという打診でした。この形はロール・スルー・ジ・エイジズの輸入から、後に「日本語版出さない?」という誘いを受けたのと同じパターンでしたね(思い返すと相乗り時代の幕開けだったということか)。

自分達としても、ちょっと背伸びだけど自社製品と言えるものをさらに増やしたかったし、うーん不安も懸念もあるけどやりますという感じでした。あと日本語版出さない限り取り扱いを継続できない、英語版の輸入はもう無しね、と言われてしまったのもありました。現実としては余裕のある選択肢から自由に進路を選んでいるわけでもない、というのがボードゲーム出版の仕事というものですね。

元々を言えばこのゲーム、(ちょっと自信無いですが多分)最初に商品化された時はフリンケピンケというゲームで、Kniziaお得意のと言いますかバージョン違いが色々出たゲームでした。私はフリンケピンケではやったことが無くて、ゲームストア・バネストさんが過去に扱っていて愛好者間では人気もあった「トール」というバージョンで遊んだことが有りました。細長い黒い箱がかっこ良かったし、北欧神話のテーマ設定なのも良かった。

その「トール」が今回「ボツワナ」になる、という話を当初Fredから受けた時は「えっ、そうなん」という感じであまり前向きでも無かったのが正直なところです。だから日本語版にあたっては「タイトルとか製品仕様とかこちらで独自に作るのはアリですか?」とかダメ元で質問した気もする。ただ当然ですがFred社側の意図は相乗り生産の募集にあるのでそれはできるわけもなく。動物テーマねえ…ファミリー向けということなんだろうけど果たしてどうなんだろう、Fred社製のはそんなきめ細やかな作りでも無いし…とは思いもしました。ただ輸入販売したボツワナを自分達でも遊んでみてからは、沢山入っている動物フィギュアをなんだかわからないけど集めてくるゲームプレイが「それはそれで楽しめるなあ、よく分からないけど」と見直してもいたので、踏ん切りを付けて乗ることにし、出版したのが当時の日本語版です。あの時できた最大限の変更はタイトルロゴと箱裏と説明書の文章、あとカードの日本語表記くらいで。Fred版を基礎にしつつ出来る範囲で良い日本語版にする、という作業は明らか窮屈で、その分学びは多かったです。ターニングポイントになったとすら言える。「やっぱり誘われるのではなく自分が企画からして独自仕様で日本語版を出したいなあ」と思ったのもあります。2012年はボツワナより前に「ファブフィブ」「古代ローマの新しいゲーム」「フォルム・ロマヌム」「酔いどれ猫のブルース」なんかをやっていた頃でしたね。

その後数年をかけて、緩やかながらボツワナ日本語版(2012年版)は完売し、確か一度は増産もしたかと思います。ただそれがまた完売する頃には直接コンタクトのあったFred社の担当者が退職していました。その担当者がこちらからするとキープレイヤーで、「名作ゲームをパッケージを小さくしてリメイクする」というNGOの基本コンセプトはこの方との仕事を通じて「やっぱりそれが良いよね」と方向性が明確になった部分が確かにありました。その担当者が辞めた後やり取りするようになったFred社の社長は「大型玩具店向けにボツワナのパッケージを4倍のサイズにしたい(内容物そのままで)」と言い出すような人で、「感性が合わんなあ…」と。コストや仕様、様々な点から接点を見いだせなくなったこともあり、Fred社とは距離が空く形になりました。

…と、これ10年とか前の話なんですよね(笑)。振り返るとボツワナとの付き合いも10年越しなんてことになっているわけですが。ご存知の通り2020年以降のコロナがあり、加えて国内でのボードゲームのリリースタイトルの爆増があり…、ボードゲーム商業のパイが「粉々になるのか?」という程割れていく中で、ニューゲームズオーダーのボードゲーム出版は今後どうしていくのが良いのだろう?と立ち止まって考えるフェイズに入りました。現時点でも「こうすれば今後も商業的に上手く行く」ということとは直結できてはいないのですが「ドイツボードゲームの名作を適切に入手出来て遊べる」という環境作り、環境維持はできる限り続けていこうと。思い返しても、自分達が感銘を受けた90年代ドイツで結実したボードゲームが生じさせるエネルギーについて、「何でこれだけのことでこんなに面白くなるの!?」という驚きに満ちた飛躍について伝えたい、というのがやはり原点ですので。

と考えた時、これだけ新作リリースが氾濫している状況下で我も我もとそこに加わるより前にすべきことは、自分達が過去に取り扱ってきたラインナップのメンテナンスだなと思い至り、今回のボツワナやキャントストップの再版リリースになったわけです。ボツワナについては未だにFred社が世界的な出版権を保持しているのかな…と難しさを感じていたものの、Kniziaサイドに確認したところ日本語版出版権はKniziaサイドに戻っているとの返答だったので、「だったら独自版なら出せるんだね?」となり、早速取り掛かろうとなったのでした。

…という所で一旦切り上げましょう。デベロップメントと言っても広うござんす、というのは、ボードゲーム製品作りの実作業に取り掛かる前段階(まあ企画ですね)に考えたり動いたりすることが多いからで、この部分をしっかりせず薄い理由や動機で何となく作り始めてもデベロップする大元、礎が無いと思うからです。この前段階もデベロップメントに大きな影響をもたらす(というか大枠趨勢を決めるとすら言える)ので、デベロップメントの仕事には広義にはこの部分も入るよねという認識をしてるんですが、実際はどうなんだろう。まあ誰が決めることでも無いのか…ということでまた次回です。