ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その6。

前回何とかボツワナの話を再開し、この勢いで書ききりたいなあ…と思ってたらまた一か月経過した(汗)。書いてることに気付いてる方とかいるかな?と思いきや意外と「楽しみにしてます」なんて有難いお声掛けもいただいていたので、流石に尻切れトンボにはできないなと。ということで(本来これが本題の)今回のボツワナの仕様とか作った際に力を入れたりこだわったり苦労したりしたポイントのお話です。

・箱サイズと価格、カートン入数
・前回版を真面目に見つめ直してモチーフの再解釈と適度な明瞭化
 ・動物コマの種類、色、形、並び順
 ・ボードの新規導入、形状、製法、表示
 ・ラウンドを「ツアー」と呼ぶことにした(gooさんからのアイデア)
 ・プレイヤーの駒を自動車型にするかの検討と見合わせ、パッケージやボードマスでの表現
 ・箱裏文のまとまり

と、チェックポイントはこんな感じですかね。

・箱サイズと価格、カートン入数
NGOとしての確認を含んだ話になりますが、まず「箱は特に他の理由が無ければできる限り小さく」これは私たちがボードゲーム製品を作る時の大原則です。大きい箱を所有するという満足感や、箱が大きいと何か重厚で壮大な本格作品なような気がするという(悪く言ってしまうとこけおどし的な)心理的なアピールを抜きにして実用で考えた時、小さい箱に必要十分なゲーム用具が入っているというのは沢山メリットがあります。まず何といっても輸送費用。そして私たちの倉庫のスペースも、購入された方の自宅での保管スペースも、全部カットされます。どこかに持って行って遊ぶような場合の持ち運びも便利。

元のボツワナはFred社の「ロール・スルー・ジ・エイジズ」の箱サイズを踏襲していて(当時RTTAも売価3600円とリーズナブルでした)、既存の大箱ボードゲームの4分の1程度のサイズで中にはしっかり良いゲームが入ってるというコンセプトは私たちには非常に「わかる」ものでした。そのサイズが良いならできるだけこちらでも合わせていこうと、「古代ローマの新しいゲーム」「フォルム・ロマヌム」「モダンアート」など、できるだけ合わせて日本語版をリリースしていきましたね。

で、今回のボツワナなんですが、先にある想定として動物フィギュアをやめて良い感じの木製コマで…というのを決めていたので、「さらに小さい箱でも入れられるよな」ということと、「できれば元の3500円より下げるのが良いだろうな」というのがありました。昨今のボードゲーム価格の(円安や製造コスト増要因からの)価格上昇を考えると「元サイズ・木製コマ・価格3500円」も全然常識的な範囲なんですが、NGOでやってきた出版姿勢に照らすと小型化と価格下げを実現したい所でした。私の個人的なこだわりなのか、NGOに期待されてる大切な部分なのか…というのは判然とはしないのですけどね。でも自分達にとっても購入される方にとっても、製品としての輪郭をくっきりさせる意味はあると思っています。

と、実際には一旦「箱小型化・木製コマ・価格下げ」の方向で検討を始めても、実際に製品仕様を固めようとしていくと「小型化はできるけど価格下げられんなコレ…」とか、「意外と小型化が上手く行かない…」とか、割とすぐ袋小路に入って当初の構想通りできていかないものなのですけどね。私たちの場合数多くボードゲーム製品を作ってきた(成功も失敗もたくさん積み重ねている)ので、過去に作ってきた製品のパーツやその際のコストや安定性や…という所を手掛かりにして新しい物を作っていきます。「できるかわからない、どうなるかわからない、出来も費用も皆目見当付かない」といったようなパーツや趣向も、その時作っているゲームの魅力を広げる上で絶対に不可欠だということであれば導入に挑戦しますが、大概それは本当に難しいです。ぼやんとした、雑に想像したリターンの為にはリスクは取らないよと。

ということで元のボツワナより箱の小型化を目指した時、私達の手近なターゲットとなったのが「探偵稼業」でした。探偵稼業と同寸法ですと箱やカートンの体積が既にわかっているので、明らかにできる数字の前提が増えるのです。ちなみに探偵稼業の寸法がどこから来たかというとその前に出した「ビザンツ」です。ビザンツについてはもとは(確か2008年頃でした)アミーゴ社から出ていてニムト同様の大定番カードゲームサイズでしたが、再版したラウタペリ社(フィンランドの会社)と日本語版出版で合意した際にあちらがサイズを決めていて、それが探偵稼業と同サイズ。ビザンツは印刷もあちら担当という意向でこちらもそこは飲んだ所だったので、ビザンツの輸入と共にNGOの箱サイズは1個増えました。その後再版したバントゥとかはこの底面をもとに薄くしたもの。今回のボツワナを出すにあたっては「より縦長な交易王サイズというのもあるにはある」と一応一旦は検討したのですが、割とすぐに「いや探偵稼業か元のままのサイズかの二択だな」となりました。これは内容物のサンプルを作って入れ込み、どちらがより都合良さそうか確かめてみた結果です(駒は3Dプリンターでサンプル製造します)。あとパッケージを想像した時の、実現できそうな販売価格とパッケージの印象のつり合い。これに伴い、カートン入数は今回24個に決めました(探偵稼業は36個)。という話は一般のプレイヤーの皆様には直接関係無い部分かとは思いますが、商品の浮沈には無視できない部分です。商品の価格と箱サイズとカートン入数とカートンサイズというのは直接関係しています。カートンサイズは一つにはカートン1個1個の取り回し、輸送や保存の利便で決めることになるのですが、同時に販売の際の単位でもあります。ある程度以上の規模を持った業者さんはゲームをカートン単位で仕入れているので、カートンに入っている個数とカートン1つあたりの価格というのがちょうどいい所になっているかというのも同時に気にしているのです。箱サイズを小さくすれば取り回せるサイズのカートンに入る部数は増えるのですが、さてそこで増やせるだけ増やすのが正解なのか?それともカートンあたりの価格をある程度同じあたりに合わせるのが正解なのか。NGOでは箱の重量体積の適正を目指しつつも、カートン辺り価格をある程度決まったレンジに収まることを最優先に考えているのが現在の方針。ボツワナの販売価格は税抜2700円、24個入で税抜64800円…という感じです。

・前回版を真面目に見つめ直してモチーフの再解釈と適度な明瞭化
今回ボツワナを改めてリリースするにあたり、私が避けて通れないと考えたのはここでした。…ホントに避けて通れないのか?と問われると、ちょっとボンヤリすれば避けられないことも無い気がするのですが、いやここはちゃんとせんとなと。ボツワナは2013年頃にFred社が出したフリンケピンケの新たなバージョンで、おそらくはファミリー層をターゲットにしていたものだった。動物のプラスチックフィギュアを安価に得たことに着想を得たのではないか…という推測が立つ。実際にその動物フィギュアは魅力的である程度以上の好評を博した。NGOの当時の日本語版出版はその忠実なローカライズでほぼ動かす幅は無かった、と。

元を正せば、今回は違うわけですよ。Knizia GamesとNGOが新たな契約を結んでいますから、私が希望すればボツワナでは無いフリンケピンケの新版を出すことは可能だったのです。トールにもロコにも、他の新しいモチーフの何かにもできた。でも今回もボツワナにしよう、と私が判断したわけです。現在のボツワナ英語版がアートワークそのままに「ワイルドライフサファリ」と改題しているのにです(あちらは何で変えたんだろう)。

何で今回も「ボツワナ」にすることにしたか?それは10年前とは言えNGOがボツワナのローカライズをしたことで、少なからず国内でこれを流通させ続け、ある程度以上のご好評をいただけ、終売した現在も遊び続けていただいている。自分達の過去のアクションを経て、このゲームは日本で「ボツワナ」になった側面があると思うからです。元はフリンケピンケだったよとか、こういうカジュアルなゲームを遊ぶ現場ではあまり重要ではないでしょう。もう一旦ボツワナで落ち着いた物を明確に強い理由なく何となく動かすのは、あまり望ましくないなと。絶対変えた方が良いはずだという代案を私自身持ってなかったのもあります。だからもう一回ボツワナで行こう、今度は自分達が仕様を全体的にコントロールできるボツワナでと。

と、そうなりますと課題として浮上してくるのが…「このゲーム、そもそもなんなん?」という問いです。これはKniziaさんがゲームをルールから着想していて、テーマについては出版社に任せるケースが多いからで、面白いゲームのルールなのだけど、これをどんなゲームの競争に見立てようか?というのが後付けされていることが多いのですね。この点で言うと元のフリンケピンケのアブストラクト、でもこれは株かな…という抑え目な実装というのは適切ではあった。でも商業的には地味過ぎた。だからFredがボツワナにした。わかる。それで広く、特に低年齢の方にも遊ばれるチャンスがあるようになっている。だから今回もボツワナで行く方が良いと思いました。で、Fred版の正直動物フィギュア頼りでゲーム自体はぼやんとしてると言わざるを得ない実装に、いくらかは改良を加えたい。NGOオリジナル版として出すからには。ということでした。完璧には無理だとは思っている。でも「なんかそんな感じもするね」という自然さ、納得感、情感を強化したいと。整合性ではないのだけど、辻褄が合ってるように見えなくもないゲームの姿。これはまあ、ドイツゲームの平均的な態度ではあるのでしょう。再現と駆け引きやり取りの面白さなら後者優先。前者をどの程度おざなりにするかは人による、全然うっちゃってもアブストラクトにしても後者が素晴らしければ賞賛される、でも前者の質も高めればそれはそれで賞賛される。そういうジャンルなので。

ということで、ボツワナというゲームを見直して改めて出す主体となろうとした時「これは多分こんな感じのゲームなのだと思っています」という立場を可能な限りははっきりする(明示しなくても良いけど姿勢としては持っている)方が良いと。この課題に本格的に取り組んだのは、イラストレーターのgooさんに依頼をお受けいただき、立川にご足労いただいて具体的なオーダーを出すにあたってでした。

…長いですね。全然まだ終わらなかった。結局また次回に続きます。