ボツワナ22年版振り返りをきっかけに、ゲーム制作の要点のお話。その3。

【ボツワナ2022年版出版の理由】
ということで、ようやくボツワナの話に入ります(笑)!私吉田のやるボードゲーム作りの話なんて、ホントに紐解いてしまいますと30年近く遡っての動機の話に関連してしまうので、取り留めも無いなと改めて思ってもおりますが。でも読みづらくても(言ったらどういう気持ちでやってきたのか憶えている内に)遡って書き連ねておこうと思います。

ボツワナ2022年版ですね。そもそもニューゲームズオーダーとボツワナの関係の元をたどると、グリフォンゲームズ、社名で言うとFred Distribution社との縁が2010年頃(つまりNGOが始まったころ)ロール・スルー・ジ・エイジズ、フォーセール、ハイソサエティの輸入販売→日本語版出版のお誘いから生じ(というかFred社からの誘いが無ければ具体的な出版物のアテが無かったのでニューゲームズオーダーはメーカーとしては始まらなかったかもという感じだったのですが)、ボツワナはFredがハイソサエティやフォーセールの次くらいにリリースを予定していたゲームでした。NGOは当初からパブリッシャーを志向しつつも主には米Rio Grande Gamesから輸入した当時日本で流通しておらずニーズがありそうだった英語版ボードゲームの卸で何とか会社をスタートしましたので…メディチとかトーレス、魚河岸物語、クロノスとかですね(今思い返しても良いゲームをチョイスをしていた、我ながら必死だったんだろうな~当時…)。

で、2012年にFred社から「ボツワナ」を出すけどどう?と。ボツワナも最初は英語版の輸入販売でした。数百部をそこそこのスピードで完売できたのだったと思います。では、それを次は日本語版でまとまった数どうかという打診でした。この形はロール・スルー・ジ・エイジズの輸入から、後に「日本語版出さない?」という誘いを受けたのと同じパターンでしたね(思い返すと相乗り時代の幕開けだったということか)。

自分達としても、ちょっと背伸びだけど自社製品と言えるものをさらに増やしたかったし、うーん不安も懸念もあるけどやりますという感じでした。あと日本語版出さない限り取り扱いを継続できない、英語版の輸入はもう無しね、と言われてしまったのもありました。現実としては余裕のある選択肢から自由に進路を選んでいるわけでもない、というのがボードゲーム出版の仕事というものですね。

元々を言えばこのゲーム、(ちょっと自信無いですが多分)最初に商品化された時はフリンケピンケというゲームで、Kniziaお得意のと言いますかバージョン違いが色々出たゲームでした。私はフリンケピンケではやったことが無くて、ゲームストア・バネストさんが過去に扱っていて愛好者間では人気もあった「トール」というバージョンで遊んだことが有りました。細長い黒い箱がかっこ良かったし、北欧神話のテーマ設定なのも良かった。

その「トール」が今回「ボツワナ」になる、という話を当初Fredから受けた時は「えっ、そうなん」という感じであまり前向きでも無かったのが正直なところです。だから日本語版にあたっては「タイトルとか製品仕様とかこちらで独自に作るのはアリですか?」とかダメ元で質問した気もする。ただ当然ですがFred社側の意図は相乗り生産の募集にあるのでそれはできるわけもなく。動物テーマねえ…ファミリー向けということなんだろうけど果たしてどうなんだろう、Fred社製のはそんなきめ細やかな作りでも無いし…とは思いもしました。ただ輸入販売したボツワナを自分達でも遊んでみてからは、沢山入っている動物フィギュアをなんだかわからないけど集めてくるゲームプレイが「それはそれで楽しめるなあ、よく分からないけど」と見直してもいたので、踏ん切りを付けて乗ることにし、出版したのが当時の日本語版です。あの時できた最大限の変更はタイトルロゴと箱裏と説明書の文章、あとカードの日本語表記くらいで。Fred版を基礎にしつつ出来る範囲で良い日本語版にする、という作業は明らか窮屈で、その分学びは多かったです。ターニングポイントになったとすら言える。「やっぱり誘われるのではなく自分が企画からして独自仕様で日本語版を出したいなあ」と思ったのもあります。2012年はボツワナより前に「ファブフィブ」「古代ローマの新しいゲーム」「フォルム・ロマヌム」「酔いどれ猫のブルース」なんかをやっていた頃でしたね。

その後数年をかけて、緩やかながらボツワナ日本語版(2012年版)は完売し、確か一度は増産もしたかと思います。ただそれがまた完売する頃には直接コンタクトのあったFred社の担当者が退職していました。その担当者がこちらからするとキープレイヤーで、「名作ゲームをパッケージを小さくしてリメイクする」というNGOの基本コンセプトはこの方との仕事を通じて「やっぱりそれが良いよね」と方向性が明確になった部分が確かにありました。その担当者が辞めた後やり取りするようになったFred社の社長は「大型玩具店向けにボツワナのパッケージを4倍のサイズにしたい(内容物そのままで)」と言い出すような人で、「感性が合わんなあ…」と。コストや仕様、様々な点から接点を見いだせなくなったこともあり、Fred社とは距離が空く形になりました。

…と、これ10年とか前の話なんですよね(笑)。振り返るとボツワナとの付き合いも10年越しなんてことになっているわけですが。ご存知の通り2020年以降のコロナがあり、加えて国内でのボードゲームのリリースタイトルの爆増があり…、ボードゲーム商業のパイが「粉々になるのか?」という程割れていく中で、ニューゲームズオーダーのボードゲーム出版は今後どうしていくのが良いのだろう?と立ち止まって考えるフェイズに入りました。現時点でも「こうすれば今後も商業的に上手く行く」ということとは直結できてはいないのですが「ドイツボードゲームの名作を適切に入手出来て遊べる」という環境作り、環境維持はできる限り続けていこうと。思い返しても、自分達が感銘を受けた90年代ドイツで結実したボードゲームが生じさせるエネルギーについて、「何でこれだけのことでこんなに面白くなるの!?」という驚きに満ちた飛躍について伝えたい、というのがやはり原点ですので。

と考えた時、これだけ新作リリースが氾濫している状況下で我も我もとそこに加わるより前にすべきことは、自分達が過去に取り扱ってきたラインナップのメンテナンスだなと思い至り、今回のボツワナやキャントストップの再版リリースになったわけです。ボツワナについては未だにFred社が世界的な出版権を保持しているのかな…と難しさを感じていたものの、Kniziaサイドに確認したところ日本語版出版権はKniziaサイドに戻っているとの返答だったので、「だったら独自版なら出せるんだね?」となり、早速取り掛かろうとなったのでした。

…という所で一旦切り上げましょう。デベロップメントと言っても広うござんす、というのは、ボードゲーム製品作りの実作業に取り掛かる前段階(まあ企画ですね)に考えたり動いたりすることが多いからで、この部分をしっかりせず薄い理由や動機で何となく作り始めてもデベロップする大元、礎が無いと思うからです。この前段階もデベロップメントに大きな影響をもたらす(というか大枠趨勢を決めるとすら言える)ので、デベロップメントの仕事には広義にはこの部分も入るよねという認識をしてるんですが、実際はどうなんだろう。まあ誰が決めることでも無いのか…ということでまた次回です。