
ということで「魔法にかかったみたい」日本語版について3月26日、発売させていただきました。ここでは、今回の日本語版リリースについての様々思う事をお話させていただいておこうと思います。足回りを知りたい熱心な方はご一読ください。
●発表とリリース日
何故発表が発売直前になったのか?と申しますと、一つには弊社倉庫に着荷したからです。直前すぎるだろうという感じもありますが、我々としてはどうしても、実際に無事に荷物が来て、あらかた潰れてもないことを確認してからでないと言いたくないなと思ってしまう部分があるのですよね。ホント生産も輸送も、何があるかわかりませんから。自分がやらかすかもしれないし印刷工場がやらかすかもしれないし輸送業者がやらかすかもしれないし。発売日とかプロモーションとか十重二十重に設定して各方面に周知した後ぜーんぜん来ませんとか、販売不可能なやつが来ましたとか、みたいな事をやらかした時のダメージを考えますと、初動が多少落ち着く形になっても直前告知、そしてすぐさま受注開始、という感じで今後も行きたい気がしています。全体のことはわかりませんが、私達は一個一個要りそうな物を出版しているのでこれで事足りているし、あんまり先回り先回りでプレイヤーの皆様の未来のお小遣いにツバ付けていくのも大概にした方が良いんじゃないかと思っている所もあります。結果として「ある程度のお小遣いがある方なら悩まなくても気分良く買える位の価格帯」という立ち位置で何とか踏ん張っていきたいなという元々の動機に立脚していたら着地がこうなりました。あともう一つの事情としては、出版契約上2026年4月がリリースしなければいけない時限でして…色々と念を入れて作っているうちにまたしても締め切りギリギリになってしまいました。昨今の国際情勢、輸送コストの話など本当に肝が冷える所がありましたが、無事弊社倉庫に入ってくれて感謝感激です。
●基本、拡張の価格と結果的な仕様について
先日ニューゲームズオーダーのXにて発表させていただいた所、有難いことに大きなご反響をいただけ、また「安い!」といったお声もいただきました。
この2026年に「安い」というお声をいただくというのはなかなか無い。2000円台って正気ですか、というのは一方のアタマでは私自身思っているのですが、これは総合的に判断してやはり最善手という結論になっています。まずなんですが、生産コスト的に可能なのか、という点で言うと、これはモダンアートの時もラーの時も言ってますが「十分可能」です。ニューゲームズオーダーの基準としては、現段階の一回あたり生産部数でも全然まともな利益率がある形で作れています。このドル160円での円安時代でもなお…いやホントこれ以上の円安は勘弁してくださいあと輸送費用の増大も勘弁してくださいという気持ちは切実にありますが。現時点ではしっかり合格点を出せてますし、出したゲームがよりケタの違う人気を得られた暁には一回あたりの生産数が増え一部当たりコストは抑えられ、利益も各段に上がり得るとは言えます。…そんな上ぶれ起こるわけないじゃない、界隈のゲームの価値の分かる愛好者の数なんて令和の世でも結局そう増えちゃいないんだから、という前提に立ちますと「顔の見えてる近場の皆様から多めにいただけ」というディフェンシブな高価格設定に向かっても当然妥当なのですが。天下の魔法にかかったみたいの出版を15年以上もかけて実現できる段になってのその逃げ腰はちょっと流石に寂しくないかということで「一般層にだって響くかもしれないじゃないか!」「面白いドイツボードゲームの面白さだって今や意外と伝わってるかもしれないじゃないか!」という仮説に立って2700円です。流行るから売れて安くできるのか、安く出したから流行に火がついて伸びていくのか、というのはタマゴニワトリ、こちらとしてはそれが始まり得る投げかけで今回も始めますという話です。ボードゲームが1万円でも2万円でも買ってくださる方というのは、ボードゲームを買い慣れまた遊び慣れていて、自分の出費の判断に自信がある方なんだと思うのですよね。ただ、その既に「自分はボードゲーマーで、面白そうだと思えばいくら高くても当然買う」という人数というのは、どれだけ「ボードゲーム人口」が増えても、そう増えるものではない。自分達が見据えているのは「ボードゲームを買ったことが無い方が自律的に買い始めてくださるか?」という所ですし、その買い始めの初期にお勧めしたいゲームを出しているということです。「試しに買ってみたらめちゃめちゃ面白かった!」と感じていただけるのかどうかという所を引き受けたいですよという気持ちです。一方で1万円でも2万円でも買って下さる皆様は2000円台日本語版なんてもう当然買ってくれるというか買い直してくれるというかカートンで買って配ってくれるんじゃないかという厚かましい期待…いや真面目な話をすれば、改めてご自身で買わなくても「あれは良いやつだよ」と一言言ってくれるだけでも全然有難いです。
さてそれもあって、と言いますか、基本2700円との比較で言いますと拡張1700円はジップ袋入りにしてはちょい高設定にはなってるかと思います。基本安めで拡張高め、には正直させてもらいました。ここまで言えば意図はわかると思います。この拡張ルール四種に関しては…バカ正直に書かせてもらっちゃいますが、なかなか複雑な思いを持ってのリリースになっていまして。拡張セットの構成としては「6人プレイ」「アミュレット」「さらなる力」「煮え立つ万能薬」の四つとなっているのですが、この四つの拡張に対する私達の率直な感想は、
・6人プレイ…有用。プレイ時間が延びるものの6人で遊んでもちゃんと面白くなる
・アミュレット…特に3人プレイに向いているとのことだが…「有ってもいいけど」くらい
・さらなる力…正直、蛇足ではないかな…。NGO的には望ましくない拡張
・煮え立つ万能薬…無料配布されたポストカード拡張だっただけありまさしく粗品。あってもなくてもどちらでも、という感じではあるけど入手できてなくてやけに気になるんですけど!という皆様が確認できるというサービス一点突破
こんな感じだったものですから、あらゆるパターンを考えました。まずあったのが「全部入りの一商品にして出す」。これはだいぶ本気で想定しました。あと「基本に6人用カードまで入れて、残りを拡張としてより低価格化して出す」。このバリエーションで、「6人用カードを基本に入れて、残りの拡張は出さずに忘れる」というのも…。ただどれも、もう一つでした。6人用カードだけは有り無しで言えばあった方が良いだろうと思ってはいたのですが、他の拡張は基本に入れてしまうと「慣れてきたら拡張を入れた方が良い」というミスリードになってしまうなと。そういう誤解をうっかりしてもおかしくない一般層のテーブルにまでこのゲームを届けようとしているだけに、それは避けたかった。とは言え6人用カードまで基本に入れてしまうと、残りの拡張3種をまとめた商品を作る時の自分達のモチベーションが危ういというか…「これは出さない方が良かったのでは?」みたいな疑問を持ちながら販売したくないなと思った所です。あと6人用カードは有用とは言っても「いや6人で遊ぶシチュエーションは僕は全く無いですけど」という人も当然多くいらっしゃるだろうし、基本セットの説明書に6人プレイ時のちょっと違う準備のことを書くのもイヤかなというのもありました。結果として拡張セットは「まず6人で遊ぶことがある人にはニーズがある&過去に発表されていた拡張ルールについて一通り確認でき『遊べる』状態にはしておける」という位置づけにしました。特に「煮え立つ万能薬」については未入手の方は多かったでしょうから(ルール見ると「なーんだそれだけのことか」という良くある追加得点要素なんですが)、「こんなんでした、一応入れておきますね」という感じです。「これだけ無いもんだからどうも座りが悪かったんだよね」という方向けになっております。この拡張で行けるかなという決め手になったのはジップ袋入りのパッケージで、基本の箱に一緒に収められることを確認した時でしたね。販売手法についてはラーの木製駒の時点でその後の魔法にかかったみたいについて考えてまして、何とか行けそうかなという感触を得ていましたが、今回の拡張についてはラー駒と異なり一般出荷もしております。出荷先の店頭でラーの本体だけ売り切れてラー駒だけが棚に残留…となったらどうにも良くないだろうと思っていたのですが、逆に拡張については、弊社通販に限ると、店頭で「拡張は在庫無いですか?」と店員さんが質問される事態が多発してストレスがあるだろうなという想像から卸も行っています。
●基本セットの販売目標部数
先日配信でもお話しましたが、この「基本2700円、拡張1700円」としたことにはより大きな決め手がありました。それは今回の(代理者であるホワイトキャッスル社との)日本語版出版契約の条件に「年間最低販売部数」というものがあったことです。これはつまり「一年間のうちに○○部以上販売できなかった場合、権利者側が即座に契約終了する選択肢を持ちます」という…。勢い込んで「待望の日本語版出版!」と申し上げているのですが、その割に年内の売り上げがそこそこに終わってしまいますと、「いきなり販売終了!もう取り扱い終わりました!」というあっという間のゲームオーバーになってしまう可能性を実は含んでいる。加えて言えばこの目標部数、率直に「なかなか多い」。交渉の結果として、先方から早々に「では最低二年は保証します、二年連続で年間○○部売れなかったら、としましょう」とは言ってもらえたので、とりあえず2027年いっぱいまでは販売できることにはなっているのですが。でも新発売した今年2026年よりも2027年に沢山売る、ってなかなか難しくないですか(笑)。となると、まずはとにかく今年ガーンと売って、何としても初年度の最低販売部数をクリアしなければ!というのが、まさに内幕の話にはなりますが私吉田の直面している事情です。今年目標部数に達すれば最低3年間の販売期間は保てますので。勿論「契約を切ることができる」であって「必ず切られる」という訳では無いですから、それこそ達成できなくても近い所にまで売り上げ部数を持っていければ終売を回避できる可能性は高まるとも思っています。契約できる方向になり、提示された条件を確認し、販売価格や仕様等々私達の意図を全面的に反映できる、かなり有難く納得性の高い契約内容だったのですが、唯一にして最大のハードルがこの条件でした。とにかく交渉して生存の幅、自由度を広げねば…ということで、「拡張セットの部数を売上部数に合算して良いですか?」「最低売り上げ『金額』にすることは可能なのですか?」といった質問を投げた(この話の時点で拡張セットを別売りすることはほぼ決めざるを得ない部分でした)のですが、ここに関しては一切のブレは無く「いえ、基本セットの売り上げ部数で判定します。これは動かせません」というご返答。それはそう。わかる。正しい。
…となりましたらね。「基本をとにかく沢山の部数売る必要がある」んだから、「基本セットの価格を安く設定する」というのはある種当然になるわけです。それも「明確に部数増の力になる」レベルの価格設定。基本と拡張の全面分離も決まり。可能な限りの小箱化も決まり。あと、目標年間販売部数を「超える」初版部数の生産も決まり。最悪でないのは、そもそも私が今回の出版で目指したいことと、求められている方向性が完全に一致したことでした。「価格を高め設定して高収益化」という路線は、この条件と向き合ったらほぼ自動的に絶たれていたのですね。勿論「2年だけ売ってお終い」とまで割り切れば、それも可能でしたが…まあ当然選びませんでした。私としてはこの「魔法にかかったみたい」は広く遊ばれて楽しまれる所に行ける、最高のゲームだと確信するからです。ホントにそうなるのか、現実にそう持っていけるかは時の運ですが!ただ、そこの率に賭けてみたかったし、賭けられはする格好にはなったということです。幸いにもというか、この円安状況の中でも何とか2000円台後半にできる生産が実現でき(高い販売部数目標が必然的な初版部数に繋がり一部当たりコストがしっかり下がったとも言えますが)、生産完了→輸送→発表→即発売、となったということです。リリースから約2週間。お陰様で、既に沢山の方にお買い上げいただいています。有難うございます。さらにさらに沢山の方にお届けする必要がありますが(笑)!そして何より嬉しいのは、今の所、大きな生産の失敗、印刷不良や広範な内容物不足などは、起きていないようです。良かった(内容物の不足などございましたらメールにてinfo@newgamesorder.jpまでご一報ください、不足物発送対応いたします)。ということで、魔法にかかったみたい、なにとぞよろしくお願いいたします!




