魔法にかかったみたい日本語版について、諸々の事情や思っていることです。

ということで「魔法にかかったみたい」日本語版について3月26日、発売させていただきました。ここでは、今回の日本語版リリースについての様々思う事をお話させていただいておこうと思います。足回りを知りたい熱心な方はご一読ください。

●発表とリリース日
何故発表が発売直前になったのか?と申しますと、一つには弊社倉庫に着荷したからです。直前すぎるだろうという感じもありますが、我々としてはどうしても、実際に無事に荷物が来て、あらかた潰れてもないことを確認してからでないと言いたくないなと思ってしまう部分があるのですよね。ホント生産も輸送も、何があるかわかりませんから。自分がやらかすかもしれないし印刷工場がやらかすかもしれないし輸送業者がやらかすかもしれないし。発売日とかプロモーションとか十重二十重に設定して各方面に周知した後ぜーんぜん来ませんとか、販売不可能なやつが来ましたとか、みたいな事をやらかした時のダメージを考えますと、初動が多少落ち着く形になっても直前告知、そしてすぐさま受注開始、という感じで今後も行きたい気がしています。全体のことはわかりませんが、私達は一個一個要りそうな物を出版しているのでこれで事足りているし、あんまり先回り先回りでプレイヤーの皆様の未来のお小遣いにツバ付けていくのも大概にした方が良いんじゃないかと思っている所もあります。結果として「ある程度のお小遣いがある方なら悩まなくても気分良く買える位の価格帯」という立ち位置で何とか踏ん張っていきたいなという元々の動機に立脚していたら着地がこうなりました。あともう一つの事情としては、出版契約上2026年4月がリリースしなければいけない時限でして…色々と念を入れて作っているうちにまたしても締め切りギリギリになってしまいました。昨今の国際情勢、輸送コストの話など本当に肝が冷える所がありましたが、無事弊社倉庫に入ってくれて感謝感激です。

●基本、拡張の価格と結果的な仕様について
先日ニューゲームズオーダーのXにて発表させていただいた所、有難いことに大きなご反響をいただけ、また「安い!」といったお声もいただきました。
この2026年に「安い」というお声をいただくというのはなかなか無い。2000円台って正気ですか、というのは一方のアタマでは私自身思っているのですが、これは総合的に判断してやはり最善手という結論になっています。まずなんですが、生産コスト的に可能なのか、という点で言うと、これはモダンアートの時もラーの時も言ってますが「十分可能」です。ニューゲームズオーダーの基準としては、現段階の一回あたり生産部数でも全然まともな利益率がある形で作れています。このドル160円での円安時代でもなお…いやホントこれ以上の円安は勘弁してくださいあと輸送費用の増大も勘弁してくださいという気持ちは切実にありますが。現時点ではしっかり合格点を出せてますし、出したゲームがよりケタの違う人気を得られた暁には一回あたりの生産数が増え一部当たりコストは抑えられ、利益も各段に上がり得るとは言えます。…そんな上ぶれ起こるわけないじゃない、界隈のゲームの価値の分かる愛好者の数なんて令和の世でも結局そう増えちゃいないんだから、という前提に立ちますと「顔の見えてる近場の皆様から多めにいただけ」というディフェンシブな高価格設定に向かっても当然妥当なのですが。天下の魔法にかかったみたいの出版を15年以上もかけて実現できる段になってのその逃げ腰はちょっと流石に寂しくないかということで「一般層にだって響くかもしれないじゃないか!」「面白いドイツボードゲームの面白さだって今や意外と伝わってるかもしれないじゃないか!」という仮説に立って2700円です。流行るから売れて安くできるのか、安く出したから流行に火がついて伸びていくのか、というのはタマゴニワトリ、こちらとしてはそれが始まり得る投げかけで今回も始めますという話です。ボードゲームが1万円でも2万円でも買ってくださる方というのは、ボードゲームを買い慣れまた遊び慣れていて、自分の出費の判断に自信がある方なんだと思うのですよね。ただ、その既に「自分はボードゲーマーで、面白そうだと思えばいくら高くても当然買う」という人数というのは、どれだけ「ボードゲーム人口」が増えても、そう増えるものではない。自分達が見据えているのは「ボードゲームを買ったことが無い方が自律的に買い始めてくださるか?」という所ですし、その買い始めの初期にお勧めしたいゲームを出しているということです。「試しに買ってみたらめちゃめちゃ面白かった!」と感じていただけるのかどうかという所を引き受けたいですよという気持ちです。一方で1万円でも2万円でも買って下さる皆様は2000円台日本語版なんてもう当然買ってくれるというか買い直してくれるというかカートンで買って配ってくれるんじゃないかという厚かましい期待…いや真面目な話をすれば、改めてご自身で買わなくても「あれは良いやつだよ」と一言言ってくれるだけでも全然有難いです。

さてそれもあって、と言いますか、基本2700円との比較で言いますと拡張1700円はジップ袋入りにしてはちょい高設定にはなってるかと思います。基本安めで拡張高め、には正直させてもらいました。ここまで言えば意図はわかると思います。この拡張ルール四種に関しては…バカ正直に書かせてもらっちゃいますが、なかなか複雑な思いを持ってのリリースになっていまして。拡張セットの構成としては「6人プレイ」「アミュレット」「さらなる力」「煮え立つ万能薬」の四つとなっているのですが、この四つの拡張に対する私達の率直な感想は、

・6人プレイ…有用。プレイ時間が延びるものの6人で遊んでもちゃんと面白くなる
・アミュレット…特に3人プレイに向いているとのことだが…「有ってもいいけど」くらい
・さらなる力…正直、蛇足ではないかな…。NGO的には望ましくない拡張
・煮え立つ万能薬…無料配布されたポストカード拡張だっただけありまさしく粗品。あってもなくてもどちらでも、という感じではあるけど入手できてなくてやけに気になるんですけど!という皆様が確認できるというサービス一点突破

こんな感じだったものですから、あらゆるパターンを考えました。まずあったのが「全部入りの一商品にして出す」。これはだいぶ本気で想定しました。あと「基本に6人用カードまで入れて、残りを拡張としてより低価格化して出す」。このバリエーションで、「6人用カードを基本に入れて、残りの拡張は出さずに忘れる」というのも…。ただどれも、もう一つでした。6人用カードだけは有り無しで言えばあった方が良いだろうと思ってはいたのですが、他の拡張は基本に入れてしまうと「慣れてきたら拡張を入れた方が良い」というミスリードになってしまうなと。そういう誤解をうっかりしてもおかしくない一般層のテーブルにまでこのゲームを届けようとしているだけに、それは避けたかった。とは言え6人用カードまで基本に入れてしまうと、残りの拡張3種をまとめた商品を作る時の自分達のモチベーションが危ういというか…「これは出さない方が良かったのでは?」みたいな疑問を持ちながら販売したくないなと思った所です。あと6人用カードは有用とは言っても「いや6人で遊ぶシチュエーションは僕は全く無いですけど」という人も当然多くいらっしゃるだろうし、基本セットの説明書に6人プレイ時のちょっと違う準備のことを書くのもイヤかなというのもありました。結果として拡張セットは「まず6人で遊ぶことがある人にはニーズがある&過去に発表されていた拡張ルールについて一通り確認でき『遊べる』状態にはしておける」という位置づけにしました。特に「煮え立つ万能薬」については未入手の方は多かったでしょうから(ルール見ると「なーんだそれだけのことか」という良くある追加得点要素なんですが)、「こんなんでした、一応入れておきますね」という感じです。「これだけ無いもんだからどうも座りが悪かったんだよね」という方向けになっております。この拡張で行けるかなという決め手になったのはジップ袋入りのパッケージで、基本の箱に一緒に収められることを確認した時でしたね。販売手法についてはラーの木製駒の時点でその後の魔法にかかったみたいについて考えてまして、何とか行けそうかなという感触を得ていましたが、今回の拡張についてはラー駒と異なり一般出荷もしております。出荷先の店頭でラーの本体だけ売り切れてラー駒だけが棚に残留…となったらどうにも良くないだろうと思っていたのですが、逆に拡張については、弊社通販に限ると、店頭で「拡張は在庫無いですか?」と店員さんが質問される事態が多発してストレスがあるだろうなという想像から卸も行っています。

●基本セットの販売目標部数
先日配信でもお話しましたが、この「基本2700円、拡張1700円」としたことにはより大きな決め手がありました。それは今回の(代理者であるホワイトキャッスル社との)日本語版出版契約の条件に「年間最低販売部数」というものがあったことです。これはつまり「一年間のうちに○○部以上販売できなかった場合、権利者側が即座に契約終了する選択肢を持ちます」という…。勢い込んで「待望の日本語版出版!」と申し上げているのですが、その割に年内の売り上げがそこそこに終わってしまいますと、「いきなり販売終了!もう取り扱い終わりました!」というあっという間のゲームオーバーになってしまう可能性を実は含んでいる。加えて言えばこの目標部数、率直に「なかなか多い」。交渉の結果として、先方から早々に「では最低二年は保証します、二年連続で年間○○部売れなかったら、としましょう」とは言ってもらえたので、とりあえず2027年いっぱいまでは販売できることにはなっているのですが。でも新発売した今年2026年よりも2027年に沢山売る、ってなかなか難しくないですか(笑)。となると、まずはとにかく今年ガーンと売って、何としても初年度の最低販売部数をクリアしなければ!というのが、まさに内幕の話にはなりますが私吉田の直面している事情です。今年目標部数に達すれば最低3年間の販売期間は保てますので。勿論「契約を切ることができる」であって「必ず切られる」という訳では無いですから、それこそ達成できなくても近い所にまで売り上げ部数を持っていければ終売を回避できる可能性は高まるとも思っています。契約できる方向になり、提示された条件を確認し、販売価格や仕様等々私達の意図を全面的に反映できる、かなり有難く納得性の高い契約内容だったのですが、唯一にして最大のハードルがこの条件でした。とにかく交渉して生存の幅、自由度を広げねば…ということで、「拡張セットの部数を売上部数に合算して良いですか?」「最低売り上げ『金額』にすることは可能なのですか?」といった質問を投げた(この話の時点で拡張セットを別売りすることはほぼ決めざるを得ない部分でした)のですが、ここに関しては一切のブレは無く「いえ、基本セットの売り上げ部数で判定します。これは動かせません」というご返答。それはそう。わかる。正しい。

…となりましたらね。「基本をとにかく沢山の部数売る必要がある」んだから、「基本セットの価格を安く設定する」というのはある種当然になるわけです。それも「明確に部数増の力になる」レベルの価格設定。基本と拡張の全面分離も決まり。可能な限りの小箱化も決まり。あと、目標年間販売部数を「超える」初版部数の生産も決まり。最悪でないのは、そもそも私が今回の出版で目指したいことと、求められている方向性が完全に一致したことでした。「価格を高め設定して高収益化」という路線は、この条件と向き合ったらほぼ自動的に絶たれていたのですね。勿論「2年だけ売ってお終い」とまで割り切れば、それも可能でしたが…まあ当然選びませんでした。私としてはこの「魔法にかかったみたい」は広く遊ばれて楽しまれる所に行ける、最高のゲームだと確信するからです。ホントにそうなるのか、現実にそう持っていけるかは時の運ですが!ただ、そこの率に賭けてみたかったし、賭けられはする格好にはなったということです。幸いにもというか、この円安状況の中でも何とか2000円台後半にできる生産が実現でき(高い販売部数目標が必然的な初版部数に繋がり一部当たりコストがしっかり下がったとも言えますが)、生産完了→輸送→発表→即発売、となったということです。リリースから約2週間。お陰様で、既に沢山の方にお買い上げいただいています。有難うございます。さらにさらに沢山の方にお届けする必要がありますが(笑)!そして何より嬉しいのは、今の所、大きな生産の失敗、印刷不良や広範な内容物不足などは、起きていないようです。良かった(内容物の不足などございましたらメールにてinfo@newgamesorder.jpまでご一報ください、不足物発送対応いたします)。ということで、魔法にかかったみたい、なにとぞよろしくお願いいたします!

魔法にかかったみたい/Wie Verhext! 日本語版を発売します。

このたび、アンドレアス・ペリカン作のカードゲーム「魔法にかかったみたい」を日本語版として発売します。希望小売価格は税抜2700円で、箱のサイズは弊社ボツワナと同じです。カードはじめ内容物の種類や寸法は原語版であるドイツ語版とほぼ同じです。またこれにあわせ、4つの追加ルール(「アレアの宝箱」収録の3つと、当時オーストリアゲームミュージアムがエッセンで無料配布したミニ拡張)を収録した「魔法にかかったみたい拡張セット」も発売します。こちらは本体の箱に収まるサイズのジップ袋入りとなり、希望小売価格は税抜1700円です。

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ということで、なんと!「魔法にかかったみたい」の日本語版発売です。万歳。
しかも近年の弊社定番、ボツワナ小箱に収めつつ内容物縮めず2700円です。
ニューゲームズオーダーの創業時から「出して欲しい」と沢山のご要望をいただいてきた、言わずと知れた(と言いたい)最高のゲームの出版をついに実現できることになりました。18年越しとかですか、もう長すぎて当時からの全ての経緯を思い起こすにも骨が折れるくらいになりましたね。

…という所で毎度ながらなんですが、「魔法にかかったみたい」このゲームの現在の知名度というのはどうなのか。日本国内のボードゲームの広がりが、もう観測はおろか想像もしきれない範囲に及んで久しいんですけども。本作の元版は2000年代後半、2008年頃に発売された、独・ラベンスバーガー/アレアによる中箱サイズのボードゲームです。とは言え見返してみると内容物にボードは無く、ボードに近い物品もなく、カードと木製/紙製マーカー類だけ。その認識を成していたのはプレイ時間とゲーム内容、そしてアレア中箱のパッケージサイズによるものだったかと思います。今回は箱を大幅に縮小しましたので、カードゲームと呼んだ方が正確かもしれません。近年日本でボードゲームが広がった…と言っても、その「ボードゲーム」の広がりに比べれば「ユーロボードゲーム」の広がりは限定的で、「ドイツボードゲーム」についてはより一層限定的(というか「間接的」?)、でしょう、という把握で今現在私は仕事をしていますから(今ボードゲームの中にユーロボードゲームがあってその中にドイツボードゲームがあるという直線的な把握もはなはだ怪しいですが)、自分の把握の中でドイツボードゲームからユーロボードゲームへとジャンルの表札が入れ替えられつつあった2000年代後半に出(てその時はひとたび覇権を握った、決定的に評判になってい)た「魔法にかかったみたい」が、この2026年日本でどうなのか?というのは当然不明なのですが、私の信じる限りでは「魔法にかかったみたい」は時代を悠々と貫く最高のゲームですし、そこに共感して下さる方は今なお少なからずいらっしゃるのではないかなと。そして新たなプレイヤーも数多く到来させてくれるだけの魅力がこのゲームにあるはずです。今回の発売をきっかけに色んな方面に向けてご紹介していきたいですし、広く遊んでいただけるようになれば嬉しいですね。

振り返ると「魔法にかかったみたい」がリリースされた2000年代後半というのは、今となっては(当時自分を取り巻いていた環境からの印象も多分に含むとは思いますが)ボードゲームにとり非常に良い時代だったなと思います。当時のボードゲームの出版時期を区分するのにざっくり5年ごと、1990年代前半/後半、2000年代前半/後半、そして2010年代~、というのを私もしばしば口にしますが(どのくらいの範囲でコンセンサスがある事なのかはともかくNGO周辺では頻繁に用いられていたカテゴライズですね)、「1990年代前半にドイツゲームが盛り上がってきて、1995年にカタンが来て、1990年代後半に黄金時代が到来してより難しいゲームが発表されて行き、2000年辺りにその売れ行きが行き詰って少なからぬ出版社が潰れにわかに一般層を過剰に意識、方向性が見えなくなった2000年代前半、新たな方向性が現れ始めた2000年代後半…」というような(ごくごく単純化してはいますが)把握があります。私が2006年秋から店を始めて、何かありそうな魅力あるボードゲームを探しては仕入れて売ってという仕事を始めた時期というのがたまたま意欲的な良いゲームが沢山出てきた時分で、その点では幸運でした。勉強のために当時メビウスゲームズさんの頒布会に加入して、届いたものをすぐ遊んで、としてましたが、今思えば遊びがいのある良いゲームが数多く出てきていた。「面白いゲーム」なのか、「売れる、世の中に広まるゲーム」なのか、という気の進まない二択に2000年代のボードゲーム出版が突き当たり、プレイヤーとしてもその頃はジャンルの停滞感(というか「え、ドイツボードゲームってもう終わり?」みたいな懸念すらあったかも)を味わっていたのですが、後半に入った所で「面白さも売れ行きも両方取りに行きます」みたいな作者や出版社の反発を志したゲームが数多く出て、界隈に活気がいくらか戻った。その頃のゲームに感じられた「ドイツゲームの面白さを諦めないよ」といったマインドには、私自身大きな影響を受けました。その直後、2009年のドミニオンのリリースが国内でも大きな爆発を起こしてボードゲーム商業を取り巻く色んな話が変わっていった、という感じだったのですが、魔法にかかったみたいが出てきて広まった時期というのはこのドミニオンと重なっていました。ドミニオンと魔法にかかったみたいが新作として同時にあるというのは今思ってもすごい状況で、自分としても「ドイツボードゲーム復活!」といった話をよくお客さんとしてた記憶があります(この二作については作者は両方ドイツ人では無いですが)。

ドミニオンについては最初期にB2Fでもアメリカからの輸入販売を行っていて、仕事としての関わりはより多かったのですが、その後ホビージャパンさんからドミニオン日本語版が出て広まっていった一方で魔法にかかったみたいはその後あまり多くは供給されず、日増しに増えていくタイトルの中に流れ去っていったことに、勿体なさはずっと感じていました(当時のアレアブランドのラベンスバ―ガー内の立ち位置の不安定さが供給が止まった要因だったと個人的には推測しています)。自分のメールボックスを掘り起こしますと、2016年に(2014年~2015年にモダンアート、ラー、そして枯山水を出した後ですね)当時のアレアの担当者だった編集者ステファン・ブリュック氏と何度かメールをやり取りしていて、これが魔法にかかったみたい日本語版出版についての初めての具体的な打診でした。当時はまだまだ今ほどは日本語版出版が一般的な状況でもなく、こちらが手ぶらで唐突に、(ドイツ最大の出版社である)ラベンスバ―ガー傘下のアレアに対して「魔法にかかったみたいの日本語版を出させてもらえませんか?」と連絡したとて門前払いを食らう可能性が高いことは重々承知の上でしたが、このタイミングでコンタクトを試みたのは「ラー日本語版を出せたから」でした。

(↑当時送ったメールに添付した魔法にかかったみたいドイツ語版とラー2014年日本語版の比較の写真です。うち日本でこんなの出してるのよというお知らせ)
何せラーはアレアから出たゲーム(通し番号「1」が振られていたはず)ですから、ライナー・クニツィアからラーの権利許諾を受けて出している日本のパブリッシャーです、という名乗りからなら多少まともに取り合ってもらえないかなあと期待したのです。しばらく経った所でステファン・ブリュック氏からメールが返ってきて、それ自体は(スルーされなかった時点で)嬉しかったのですが、 一方で「でもこの連絡はジャブ程度のことなんだよなあ」という実感もしていました。トントン拍子に進むことはまず無いと承知の上での連絡だったと言いますか。「魔法にかかったみたい日本語版を出したいんです」という意思表明をすることには意味があるんですが、出ればどんな形でも良いわけでは無く、各種の条件をニューゲームズオーダーの方に引き寄せることができて初めて商品としてのリリース成功もあるということで…そして、自分が当時知っていた限りのラベンスバ―ガーの出版方針からすると「それは許可してもらえる見込み無い」ということは承知してもいました。私が得たかったポイントは大きく二点。

・製品仕様(特に箱サイズ、あと一部のカード表示)を変えたい
・ニューゲームズオーダーの仕切りで生産したい

これなわけです。そしてラベンスバーガーはローカライズで製品仕様の変更を許すとは考えられなかったし、自社工場で製品を低コストで生産して利益を出すビジネス手法…という話も聞き及んでいたため、私の希望とは正直かけ離れていました。まあその時のメールのやり取りはそこにまでも及ばず、ステファン氏から「ちょっとラベンスバ―ガーのスタッフに聞いてみるよ」という話から「聞いてみてるけど話を進めるのはちょっと難しそう、今私たちの状況は立て込んでいるんです、ごめんね」という返答でした。ですよね~~という感じで最初の連絡は終わり。これはもう本当に持久戦だなと思いまして、その後しばらく経つたびに「状況変わってたりしませんか?」といったメールを送ってみてはいたのですが、そうメールも返ってこない状況になりました。ラベンスバ―ガー内でアレアブランドでの出版自体があまり盛んで無くなっていったのだと思います。そんなこんなで数年が経過し(笑)、

「これはもう、『魔法にかかったみたい』の権利が作者のアンドレアス・ペリカン氏の手元に戻る(つまりラベンズバーガーの権利下でなくなる)くらいの時間が経過してからでないと無理そうだな…」

と、(実際にラベンスバ―ガーがこのゲームの出版権を手放すようなことになるのかどうかの確信も無いながら)頭を切り替えたのですが、しばらく経ったある時「おや、イタリア語版がオリジナルアートワークで出ている…」ということにネット情報で気付きまして(遅まきながらだったのですが、それこそ私が一旦諦めた時と同じ頃のリリースだったはずです)、そこで今度は「まず作者のアンドレアス・ペリカン氏に何とかコンタクトできんかな?」と動き出しました。オフィシャルの窓口などはなかなか見つからず、結果またしても結局BGGで彼のアカウントを発見し(最近毎回のようにこれですね…出版の命綱)、Geekmailで半年や一年に一回メールを入れる、という地道ムーブを続けていたところ、数年経った2024年の夏ごろに唐突に本人から「日本語版を出していただけるのは歓迎です!」というメールが来てひっくり返りました。そこからはアンドレアス氏が権利管理を委託しているエージェンシーのホワイトキャッスル社に入ってもらい、有難いことに条件面としては私が要望していた販売状況に合った最善を尽くせる独自仕様、アートワークの変更なども可能な形で契約させてもらえ、この2026年3月、晴れて発売できるようになりました。

いやあ…出るんですね。しっかり作ったつもりではあるのですが、無事に出来上がってれば良いなあと思います。私達の方で物をしっかり作れていれば、ゲームの内容はもう最高ですのでね。
是非とも!この機会に遊んでみていただければと思いますし、このゲームの面白さをご存じの皆様も、この機会に改めて卓に持ち出していただければ幸いです。
面白いドイツボードゲームが沢山売れる時代よ来い!と、2026年になっても小学生のような目標を掲げて頑張って参りたいと思います。よろしくどうぞ!

電力世界、約5年ぶりに再販。

ニューゲームズオーダーのXではお伝えした通り、台湾ホモサピエンスラボの1時間級ボードゲーム「電力世界」待望の再版!誰が待望してたかと言いますと特に私吉田がということになりますが。以前沢田がB2FGamesの旧ウェブサイトのブログ記事をアーカイブとしてこのウェブサイトに移管した際、リンクから各記事に飛べるようにしてくれていた…というのを思い出し、2020年の電力世界リリース発表時の記事をこちらに貼って見ます。
log.b2fgames.com/B2F2020.htm#7

行けてるかな?ということで、私自身当時の詳細な経緯は記憶の彼方のため自分の書いていたことを読んで思い出すことにしました。
…うん、こういう感じでしたね。当時にして既にこういう感じではございました。前回販売価格、税抜4500円から今回は税抜6000円とさせていただくに至りましたが、今回のホモサピエンスラボからの日本語版再版の打診、そのオファーは「生産費用は前回をキープ」というものでした(十分に有難い話だと思います)。いやバッチリ売価上がっているじゃないか…というのは、勿論大幅な円安が要因です。もう一ついうのであれば、これでなお原価率としては上がっています。正直に価格改定すればさらに上がってしまう所だったのですが、私の気持ちと販売の都合として「上げるけど何とか6000円。税込6600円。これで行かせてもらいます」というだけの設定です。なおかつ、部数も今回500部だけです。

単純に物の価値ということで言えば、この電力世界というボードゲーム、未所有/未プレイということであれば是非!他のどれにも優先してどうぞ、絶対買ってください。とお薦めして終わりたいのが本音ですが、2026年日本のボードゲーム販売がそう一筋縄で行かないことは理解はしています。理解しているのでその中で自分達の信じる最適な対応として、モダンアートやラーやドラダを2000円小箱にするという一見したら相当な離れ技に及んでいるのがただ今のわたくし達ニューゲームズオーダーです。その「名作2000円路線」については、「それホントに成立してるのか」であるとか「それホントに合ってるのか」といった疑問も持たれるかもしれないとは思うのですが、少なくともこの1年2年の結果で言えば、できているし合っている。地道ではありますが、一つ一つのタイトルから得られるリターンは向上しており継続も可能、という非常に有難く嬉しい感触を得ています。

ただ、当然ながらモダンアートやラーやドラダの出版・継続販売をここまでタイトな形で実現している、その判断の物差しを今回の電力世界に同じ感覚で当てると「それホントに再販する?」という疑問は浮かんできます。その答えは明白です。今回の6000円に価格改定しての再販、ただただ短期的な商業のことだけ考えたらやめておくのが正解だったと思います。生産はホモサピエンスラボが行っておりコストに関して私ができることは一切無かったですし、検討はしたのですが逆に再版の部数を1000部、1500部と増やしたとしても、それに見合うような条件の好転は全くありませんでした(だから500部ということでもあります)。

そういう環境、条件下にあるということは重々踏まえた上で、なお「もう一回販売したい、入手可能な状態を国内で復帰させたい」とそう思わせるほどのボードゲームが電力世界だということです。モダンアートとラーとドラダを3つ合わせた価格になってはいるのですが、でもこれは再供給しておきたい。ボードゲームの面白さ素晴らしさをこれ程までにクリアに伝えてくれる作品は早々ないと思っていますので、ここは近年自社に課している算盤勘定を一旦忘れての再販となります。是非皆様、何卒!よろしくお願いいたします。

合同会社B2Fゲームズ解散、無事清算完了しました

昨秋お伝えしましたB2Fゲームズの法人としての終了、事務作業進めてまいりまして、1月で何とか一段落しました。正確には「清算結了」というそうですが。昨年11月末までに何とか最終期の決算を提出し納税し、何とかその後の解散・清算の書類を作って先日法務局や税務署、都税事務所に市役所、年金事務所に提出してOKという段階まで作業を進めることができまして、ほっと一息。何とか会社閉められた~。現実的な話それなりに長い時間B2F/NGOでやらせてもらってきまして、私がイエローサブマリンを退職してB2Fを始めたのが2006年ですから、B2Fをたたむまでに丸19年、この形で20年目に入ったことになります。ボードゲーム出版をより本格的に取り組もうとニューゲームズオーダーを立ち上げたのですらも2009年ですからねえ。現在立川で働いている構成員4人、何とか無事でやらせてもらってますが、いつまで健康でこの形で続けられるんでしょうか?ということを意識すべき時間の経過はしてるよなと最近は思っている所でした。私個人のことで言うとお陰様でというかほとんど病院などのお世話になることもなく無事に続けられているのですが、スタッフ全員自分の物差しで測るのは間違いなく危険ですし。特に西山のやってきたタチキタプリントの仕事範囲は専門性の高さから西山に何かあった日には他のスタッフではほぼどうすることもできないので、不測の事態を考えると二社併存は年を経るごとにリスクは増大してました。その点では人生の大きな宿題を一つ終えた気はしています。終了に際して社外に迷惑をかけるような事もなく無事片づけられて、ホント良かったなと。肩の荷が下りた気持ちです。

B2Fゲームズのことを振り返りたいという思いはありつつ、既に複数新しい仕事やリリースにも取り掛かっているのでそれはまあおいおいと…となってしまいますが(笑)。とりあえず次回は直近の電力世界再生産の話から、やってまいりましょう。