
このたび、アンドレアス・ペリカン作のカードゲーム「魔法にかかったみたい」を日本語版として発売します。希望小売価格は税抜2700円で、箱のサイズは弊社ボツワナと同じです。カードはじめ内容物の種類や寸法は原語版であるドイツ語版とほぼ同じです。またこれにあわせ、4つの追加ルール(「アレアの宝箱」収録の3つと、当時オーストリアゲームミュージアムがエッセンで無料配布したミニ拡張)を収録した「魔法にかかったみたい拡張セット」も発売します。こちらは本体の箱に収まるサイズのジップ袋入りとなり、希望小売価格は税抜1700円です。
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ということで、なんと!「魔法にかかったみたい」の日本語版発売です。万歳。
しかも近年の弊社定番、ボツワナ小箱に収めつつ内容物縮めず2700円です。
ニューゲームズオーダーの創業時から「出して欲しい」と沢山のご要望をいただいてきた、言わずと知れた(と言いたい)最高のゲームの出版をついに実現できることになりました。18年越しとかですか、もう長すぎて当時からの全ての経緯を思い起こすにも骨が折れるくらいになりましたね。
…という所で毎度ながらなんですが、「魔法にかかったみたい」このゲームの現在の知名度というのはどうなのか。日本国内のボードゲームの広がりが、もう観測はおろか想像もしきれない範囲に及んで久しいんですけども。本作の元版は2000年代後半、2008年頃に発売された、独・ラベンスバーガー/アレアによる中箱サイズのボードゲームです。とは言え見返してみると内容物にボードは無く、ボードに近い物品もなく、カードと木製/紙製マーカー類だけ。その認識を成していたのはプレイ時間とゲーム内容、そしてアレア中箱のパッケージサイズによるものだったかと思います。今回は箱を大幅に縮小しましたので、カードゲームと呼んだ方が正確かもしれません。近年日本でボードゲームが広がった…と言っても、その「ボードゲーム」の広がりに比べれば「ユーロボードゲーム」の広がりは限定的で、「ドイツボードゲーム」についてはより一層限定的(というか「間接的」?)、でしょう、という把握で今現在私は仕事をしていますから(今ボードゲームの中にユーロボードゲームがあってその中にドイツボードゲームがあるという直線的な把握もはなはだ怪しいですが)、自分の把握の中でドイツボードゲームからユーロボードゲームへとジャンルの表札が入れ替えられつつあった2000年代後半に出(てその時はひとたび覇権を握った、決定的に評判になってい)た「魔法にかかったみたい」が、この2026年日本でどうなのか?というのは当然不明なのですが、私の信じる限りでは「魔法にかかったみたい」は時代を悠々と貫く最高のゲームですし、そこに共感して下さる方は今なお少なからずいらっしゃるのではないかなと。そして新たなプレイヤーも数多く到来させてくれるだけの魅力がこのゲームにあるはずです。今回の発売をきっかけに色んな方面に向けてご紹介していきたいですし、広く遊んでいただけるようになれば嬉しいですね。
振り返ると「魔法にかかったみたい」がリリースされた2000年代後半というのは、今となっては(当時自分を取り巻いていた環境からの印象も多分に含むとは思いますが)ボードゲームにとり非常に良い時代だったなと思います。当時のボードゲームの出版時期を区分するのにざっくり5年ごと、1990年代前半/後半、2000年代前半/後半、そして2010年代~、というのを私もしばしば口にしますが(どのくらいの範囲でコンセンサスがある事なのかはともかくNGO周辺では頻繁に用いられていたカテゴライズですね)、「1990年代前半にドイツゲームが盛り上がってきて、1995年にカタンが来て、1990年代後半に黄金時代が到来してより難しいゲームが発表されて行き、2000年辺りにその売れ行きが行き詰って少なからぬ出版社が潰れにわかに一般層を過剰に意識、方向性が見えなくなった2000年代前半、新たな方向性が現れ始めた2000年代後半…」というような(ごくごく単純化してはいますが)把握があります。私が2006年秋から店を始めて、何かありそうな魅力あるボードゲームを探しては仕入れて売ってという仕事を始めた時期というのがたまたま意欲的な良いゲームが沢山出てきた時分で、その点では幸運でした。勉強のために当時メビウスゲームズさんの頒布会に加入して、届いたものをすぐ遊んで、としてましたが、今思えば遊びがいのある良いゲームが数多く出てきていた。「面白いゲーム」なのか、「売れる、世の中に広まるゲーム」なのか、という気の進まない二択に2000年代のボードゲーム出版が突き当たり、プレイヤーとしてもその頃はジャンルの停滞感(というか「え、ドイツボードゲームってもう終わり?」みたいな懸念すらあったかも)を味わっていたのですが、後半に入った所で「面白さも売れ行きも両方取りに行きます」みたいな作者や出版社の反発を志したゲームが数多く出て、界隈に活気がいくらか戻った。その頃のゲームに感じられた「ドイツゲームの面白さを諦めないよ」といったマインドには、私自身大きな影響を受けました。その直後、2009年のドミニオンのリリースが国内でも大きな爆発を起こしてボードゲーム商業を取り巻く色んな話が変わっていった、という感じだったのですが、魔法にかかったみたいが出てきて広まった時期というのはこのドミニオンと重なっていました。ドミニオンと魔法にかかったみたいが新作として同時にあるというのは今思ってもすごい状況で、自分としても「ドイツボードゲーム復活!」といった話をよくお客さんとしてた記憶があります(この二作については作者は両方ドイツ人では無いですが)。
ドミニオンについては最初期にB2Fでもアメリカからの輸入販売を行っていて、仕事としての関わりはより多かったのですが、その後ホビージャパンさんからドミニオン日本語版が出て広まっていった一方で魔法にかかったみたいはその後あまり多くは供給されず、日増しに増えていくタイトルの中に流れ去っていったことに、勿体なさはずっと感じていました(当時のアレアブランドのラベンスバ―ガー内の立ち位置の不安定さが供給が止まった要因だったと個人的には推測しています)。自分のメールボックスを掘り起こしますと、2016年に(2014年~2015年にモダンアート、ラー、そして枯山水を出した後ですね)当時のアレアの担当者だった編集者ステファン・ブリュック氏と何度かメールをやり取りしていて、これが魔法にかかったみたい日本語版出版についての初めての具体的な打診でした。当時はまだまだ今ほどは日本語版出版が一般的な状況でもなく、こちらが手ぶらで唐突に、(ドイツ最大の出版社である)ラベンスバ―ガー傘下のアレアに対して「魔法にかかったみたいの日本語版を出させてもらえませんか?」と連絡したとて門前払いを食らう可能性が高いことは重々承知の上でしたが、このタイミングでコンタクトを試みたのは「ラー日本語版を出せたから」でした。

(↑当時送ったメールに添付した魔法にかかったみたいドイツ語版とラー2014年日本語版の比較の写真です。うち日本でこんなの出してるのよというお知らせ)
何せラーはアレアから出たゲーム(通し番号「1」が振られていたはず)ですから、ライナー・クニツィアからラーの権利許諾を受けて出している日本のパブリッシャーです、という名乗りからなら多少まともに取り合ってもらえないかなあと期待したのです。しばらく経った所でステファン・ブリュック氏からメールが返ってきて、それ自体は(スルーされなかった時点で)嬉しかったのですが、 一方で「でもこの連絡はジャブ程度のことなんだよなあ」という実感もしていました。トントン拍子に進むことはまず無いと承知の上での連絡だったと言いますか。「魔法にかかったみたい日本語版を出したいんです」という意思表明をすることには意味があるんですが、出ればどんな形でも良いわけでは無く、各種の条件をニューゲームズオーダーの方に引き寄せることができて初めて商品としてのリリース成功もあるということで…そして、自分が当時知っていた限りのラベンスバ―ガーの出版方針からすると「それは許可してもらえる見込み無い」ということは承知してもいました。私が得たかったポイントは大きく二点。
・製品仕様(特に箱サイズ、あと一部のカード表示)を変えたい
・ニューゲームズオーダーの仕切りで生産したい
これなわけです。そしてラベンスバーガーはローカライズで製品仕様の変更を許すとは考えられなかったし、自社工場で製品を低コストで生産して利益を出すビジネス手法…という話も聞き及んでいたため、私の希望とは正直かけ離れていました。まあその時のメールのやり取りはそこにまでも及ばず、ステファン氏から「ちょっとラベンスバ―ガーのスタッフに聞いてみるよ」という話から「聞いてみてるけど話を進めるのはちょっと難しそう、今私たちの状況は立て込んでいるんです、ごめんね」という返答でした。ですよね~~という感じで最初の連絡は終わり。これはもう本当に持久戦だなと思いまして、その後しばらく経つたびに「状況変わってたりしませんか?」といったメールを送ってみてはいたのですが、そうメールも返ってこない状況になりました。ラベンスバ―ガー内でアレアブランドでの出版自体があまり盛んで無くなっていったのだと思います。そんなこんなで数年が経過し(笑)、
「これはもう、『魔法にかかったみたい』の権利が作者のアンドレアス・ペリカン氏の手元に戻る(つまりラベンズバーガーの権利下でなくなる)くらいの時間が経過してからでないと無理そうだな…」
と、(実際にラベンスバ―ガーがこのゲームの出版権を手放すようなことになるのかどうかの確信も無いながら)頭を切り替えたのですが、しばらく経ったある時「おや、イタリア語版がオリジナルアートワークで出ている…」ということにネット情報で気付きまして(遅まきながらだったのですが、それこそ私が一旦諦めた時と同じ頃のリリースだったはずです)、そこで今度は「まず作者のアンドレアス・ペリカン氏に何とかコンタクトできんかな?」と動き出しました。オフィシャルの窓口などはなかなか見つからず、結果またしても結局BGGで彼のアカウントを発見し(最近毎回のようにこれですね…出版の命綱)、Geekmailで半年や一年に一回メールを入れる、という地道ムーブを続けていたところ、数年経った2024年の夏ごろに唐突に本人から「日本語版を出していただけるのは歓迎です!」というメールが来てひっくり返りました。そこからはアンドレアス氏が権利管理を委託しているエージェンシーのホワイトキャッスル社に入ってもらい、有難いことに条件面としては私が要望していた販売状況に合った最善を尽くせる独自仕様、アートワークの変更なども可能な形で契約させてもらえ、この2026年3月、晴れて発売できるようになりました。
いやあ…出るんですね。しっかり作ったつもりではあるのですが、無事に出来上がってれば良いなあと思います。私達の方で物をしっかり作れていれば、ゲームの内容はもう最高ですのでね。
是非とも!この機会に遊んでみていただければと思いますし、このゲームの面白さをご存じの皆様も、この機会に改めて卓に持ち出していただければ幸いです。
面白いドイツボードゲームが沢山売れる時代よ来い!と、2026年になっても小学生のような目標を掲げて頑張って参りたいと思います。よろしくどうぞ!
