さて、やっと実際に出たボツワナのお話…余りにもお待たせしました。と言いつつ、書くことを構想してたらまだ具体的な製品の話に行かないかもですが(笑)。
2022年版ボツワナ…とか言いつつもう2023年も10月半ば!海外の新旧パブリッシャーの動向を見聞きしていると…(というほど一生懸命チェックしているわけでは全然無いですが)、リリースペースを中心にびっくりする程の活動量を見せている所もあれば、「終わった?」と思いきや実は動いている、みたいな所もあり(ボードゲーム新規出版に関してはウチもですね)、ホント生き方様々になってまいりましたねえ。私どもも、今の姿勢を踏襲して引き続きパブリッシャーで生きていければ良いんですけども、さてどうなりますか(笑)!いつの世もボードゲーム出版仕事にするなんてムズいですが、コロナ来てからは輪をかけて激ムズですね。
ニューゲームズオーダー創業から数えても実に15年ボードゲーム出版やってますと、自分達の中で一旦「これはこういう風にする」「こういうことはしたくない、しない」「懸念もあるがこれはチャレンジしよう」…と、ボードゲーム製品作りについて答えを出した部分が色々とあります。もちろん時の流れや周辺環境の変化に伴って「いや、これは対応しなきゃだよね」と変わっていくこともあるんですが、やっぱり動かしたくない所は明確。…そしてその明確な部分と商売繁盛とは割と合致しないもんです、世の常ですが(笑)。
自分達が仕事を始めた2010年代とこの2020年代の違いと言えば、2010年代はボードゲームを自前製造して在庫抱えて日本で売るなんて、いかに界隈では名高い傑作名作のローカライズに成功したとしても行っちゃえば酔狂の類の所業と見なされてたと思います。もちろん「そりゃそんな事を成功させる会社が現れたら良いよね」ということでボードゲーマーの皆様には平均すれば「ちょっと無理じゃないかとは思うけどまあ頑張れ」くらいでご反応いただいてたかと思います。弊社以前にもちろんメビウスゲームズさんがサンファンですとかQ-JETですとか日本語版を実験的にリリースされていた部分はありますが、NGOを始める際にご挨拶がてらアドバイスをいただきに伺った際、メビウスさんの自社出版の状況を聞いたところ「やっぱり色々簡単じゃないですよ」というお話をしていただいたおぼえがあります。当時ドイツボードゲームを仕事で、となると基本海外パブリッシャーや問屋から各タイトル50~200個くらいを仕入れて自前の和訳付けて販売/専門店に卸す、が最大限で、出版はその脇で実験段階、というレイアウトでした。
と、今回の話は関連するけど直接この話題では無いのでその後の展開を言うと、2010年代前半~半ばにかけてじたばた日本語版を1000部ずつとか出していっていた所に2015年辺りで潮目が変わり(うちで言えば枯山水が売れ)、あ、これは行ける!と、今振り返れば数年間の理想的な時代がやってきて、いよいよ順風満帆、良いじゃないか!となった所に2020年にコロナがやってきて色々頓挫したという。ウチもなったし割合皆さんなったと思います。コロナ来たての2020年こそおうち需要みたいのに束の間の生きる道を感じた売り場方面からの特需が起こり意外と売り上げは保ったのですが、その後はうん無理だ!と。コロナだけでなく、ここに来て(おそらくボードゲームの知名度拡大からの新規参入拡大、という流れが続いたことや、ボードゲームカフェなど「買って自分の物にしなくてもボードゲームを遊べる、シェアする選択肢がある」ようになったことから)ボードゲーム出版も自分でやりたいという様々な業者さんが増えたことも一社一社の出版事業が難しくなる元だったろうと思います。
2010年代の、ほとんど担当者が居なくてやりますと手を挙げただけで歓迎して貰えた時代から、2020年代のボードゲーム出版を仕事にしたい人が沢山居て、「別に自分が敢えてやらなくても売り場に多種多様なボードゲームがあふれる」時代への変動があったと。現在に至ってもなお「いやそれでもNGOにこそボードゲームを出してほしい」と、私たちのチョイスとかクオリティ、考え方に価値を置いていただいている方からのお声掛けがあるのはたいへん嬉しく思っています。その気持ちにできる限りお応えしたい気持ちはある。しかし大状況は、乗車率パンパンの満員電車に乗り込むアクションになってるような…という思いもぬぐえない。エリアマジョリティわかる人なら常識だと思いますがそれって基本線はやらない方が良い動きなんですよね。駒1個あたりから獲得が期待できる勝利ポイントが明らか目減りますので。ボードゲーマーの端くれなので、その皆が見つめてるマス目にズンドコ持ち駒投入するのに気が進まないです(笑)。あとその物量戦で勝てるような駒を持ち合わせてないのも勿論です。
そこで今回のボツワナ(ようやく帰ってきた)ですとか、最近出しているNGOが出版しているゲーム(もそうだし、ゲーム書籍も、物撮りノートも)。それは「この色々あふれ返った2023年でも、まだまだ絶対出した方が良いよね?」と思える物を出すという事です。どれだけ点が取れるのかというのはありつつも、比較して空きマス、すいてるマスだと。とりわけボードゲームに関しては、私たちが意識している従来のドイツボードゲームの愛好者層の外に向かって、ドイツボードゲームの面白さが巻き起こる可能性にプラスをもたらせてると思える物に優先順位を持っていこうとしています。ご存知いただいている方も(もしかしたら期待していただいてる方も)いらっしゃるかと思いますが、「愛好者向け」「長時間」「大箱」のボードゲーム出版でも過去には何度か頑張らせていただきましたが、少なくとも私たちが丸ごと抱えて出版という形式では、今はやることはないかな~と。商業的にもリスキーだし、多くの目ぼしいゲームについては誰が出すかの競争も巻き起こってるでしょうし。言葉にしてしまえばこれはドイツのファミリーゲーム出版の基本の基本なのかなと思いますが、少なくとも2010年代後半から2020年代にかけてこのファミリーゲーム、ファミリーストラテジーゲームの出版が「商業的に美味しくない」という一旦の結論(とヘビー・ライトへの出版二極化)を見ました(一旦の、としておきたい)。この我々のホームである所の真ん中あたり。儲からない真ん中あたり。私たちは真ん中あたりだと信じている、端っこかもしれない領域。ボードゲーム出版、ここで仕事にしたいですなあ。この領域は廃墟になったけど他で仕事になった…という未来、生き延びれるかもしれないけどそんな満足できないんですよね(笑)。
と、具体的なボツワナの話には行きませんでしたが(そして繰り言かもしれないですが)書くべきことは書けた気がするので、次回もう一回、今度こそボツワナのディティールの話を書いて締めることにしましょう。ファミリーゲームってこんな感じかな、と思いながら作ってるということで、一応その補足説明です。