ニューゲームズオーダー、今後デジタルコンテンツ販売にも鋭意取り組んでいこうという話。

先日のコヨーテのココフォリア版の発売もそうなのですが、タイトルの通り、ニューゲームズオーダー社内で最近話し合っているのが「デジタルコンテンツ販売の強化は今後一層大事だ、本腰入れて考えていこう」ということです。

この背景としてあるのは、近年、つまりコロナ禍を何とか抜けて以降の3年あまりの、国内のボードゲーム出版/販売状況の苦戦です。「苦戦です」と平然と言い放ってしまってますが、我々ボードゲーム出版が主業ですからホント大問題ですね(笑)。2009年にニューゲームズオーダーが起業して以来15年余り、「調子良い!」と実感できていた期間はそう多くないのですが、思い返せばやはり枯山水を出版できた2014年末、2015年からはコロナが始まる直前の2019年までは相対的に言ってだいぶイケていて、それこそ2019年は「やっと事業拡大が軌道に乗ってきた!この調子で行けたら良いなあ」と希望を抱き始めた所でコロナが来て世の中が停止、これはどうしようもない、無念!となった経緯があります。2020年は巣ごもり需要と言われ一時的にボードゲームも案外売れ、「おぼつか無いけどディフェンスディフェンスで何とか乗り切れるのかなあ…そうなれば良いが」と耐えてたのですが、当然ながらそれも限界はあり、2021年2022年は本当にどうしようもなく、とにかく会社無くならないように防御姿勢で…という感じで乗り切りました。2023年くらいからはコロナからは何とか脱して来て販売も底は打ったものの、その間に国内でのボードゲームの出版タイトルが激増してきたところもあり、出版タイトルの大箱ゲームと小箱ゲームへの二極化が(欧米の後を追うような形で)日本市場でも進み、特に大箱についてはクラウドファンディングを含んだゴージャス化の影響が激しくなったところから、自分達としてはコロナ禍の頃から「今後もボードゲーム出版業を続けていくならニューゲームズオーダーはどういう風に存在価値をアピールすべきか/したいか/できるか」ということを熟考してくる中で(何せコロナ禍の半休眠時期に考える時間だけはたっぷりありました)「90年代的なドイツゲームを従来以上に小型化し、低価格化(2000円台目標)し、自分達のゲームを『より安価により多くの人達に購入し遊んでもらう』ことを目指そう」という結論になりました。そもそもニューゲームズオーダーは創業時から小箱化、価格もよりお求めやすく、という方向ではあったのですが、15年の経験の中で生産の上で実現できる幅は何とか広げられ、「2020年代中盤の今の出版販売状況で上手く行き得るならば?」ということから逆算したのがこれでした。

簡単では無かったですが近年のドラダ、ボツワナ、モダンアート、ラー、キャント・ストップ、魔法にかかったみたいと言った所は大なり小なり商業的成功を連発している状態には持ってこれました。全部の出版が着実な利益をだしており、地道ではあっても主力のコヨーテ、ペンギンパーティ、もっとホイップをといった2000円未満のカードゲームのパワーにプラスできた状態でロングセラー化しています。これだけでも簡単ではなく、この数年はだいぶ頑張ったと自分としては思っているのですが、これだけやってもなお、いかんせん「会社の収支を全て解決できた!」という状態に至るにはなお隔たりがあるのですよね。今後も一つ一つロングセラー目標の出版は続けていくつもりで今も一つ手掛けているのですが、一個出すたびに難しくもなり、あと何個ロングセラー品を作れば会社が良い所まで行くか?というと相当道半ばです。ボードゲームで例えれば、「電力会社」の風力発電所を建てて建てて、これを重ねていけばゲームに勝てるのか?といったような。

こういう状況下で同じく近年にニューゲームズオーダーが頑張ってきたのが物撮りノートやダンジョン折り紙、NSミニチュア、駒のタチキタでの木製駒販売の拡大といった新規・隣接・関連の事業で、これは自分たちがもともとやりたい事であったり、手掛けること頑張ることに対する社内的な納得感の高い仕事です。
「役に立っているだろう」「喜ばれているだろう」という確信、納得感というのは私は勿論ニューゲームズオーダーで働いているメンバーにとっては非常に大切なところで「金にはなってるかもしれないけどしょうもない仕事だな」と思ってしまうことは、根本的には続かないのですよね。役に立っていて喜ばれているなら、で自分たちが得意だったり関係を感じて取り扱うことに納得を感じられるところなら、絶対アナログゲームでなければいけないわけでもない。自分たちがもともとやっている所だけで成り立てばそれは理想ですが、それだけでは足りない時、「もう一個これやろう」と決めてやれるのはどういうものか?というのが、今まさに社内で頻繁に話し合われているものです。

その中で出てきたものの一つが、先日発表したコヨーテココフォリア版もそうですが、デジタル販売の分野です。コヨーテなどは最も典型的なボードゲームのデジタル化なわけですが、必ずしもゲームそのものの販売に限ると考えているわけでも無く、改めて考えてみるとニューゲームズオーダーから生み出すことができる文字情報とか画像とか(音声や映像はわかりませんが)オンラインで販売できるものはいくらか思いついてくるのですよね。元々のアナログゲームの仕事と関わる分野で。なにぶんデジタルコンテンツは自分達自身から生み出せ、いざ空ぶっても死なない(大量の不良在庫が積み上がり資金と倉庫を圧迫するなどが無い)だけに、この局面なら相対的に全然踏み出させていただきたい、という受け止めに今なっております。今までやってきている利益も意義もある仕事に、並行してさらに加えていく形ができれば。結局風力発電の横展開、ウィニー戦法という感じではあるのですが、粘り強くやってまいります。失敗してもケガしないように重ね重ねしていくうちにどれかが伸びたらそこを伸ばせたら良いな、という気持ちも。今年中くらいである程度形を出せていけたら良いなと思います。さしあたりコヨーテココフォリア版、引き続きよろしくお願いいたします。

「コヨーテ」オンライン版をココフォリアで発売しました。

先日Xでお伝えした通り、オンラインセッションツールのCCFOLIA(ココフォリア)のストアで、ココフォリア上でコヨーテを遊ぶための「ルームデータ版」を発売しました。

https://ccfolia.com/
https://ccfolia.com/games/hx885wyTZRvMMuaQP30E

価格は物理版と同じく税込1870円です。ニューゲームズオーダーとしては初の試みですが、ココフォリアさんよりオファーをいただき、色々なご説明を受け「せっかくの機会、ここは新しいフィールドにニューゲームズオーダーのゲームを打ち出させていただこう」と着手致しました。今後どうなっていくかは未定ですが、気持ちとしてはコヨーテは第一弾という位置づけです。

ココフォリアさんというと、聞けばTRPGのオンラインセッションのプラットフォームとしては莫大な会員数、アクティブユーザーがいらっしゃるとのことで(私もだいぶ昔はTRPGをやってましたがオンラインでは遊んだことはなく、全く明るくありません)、さらに聞けばその過半数が女性プレイヤーとのこと。今回オファーをいただいたココフォリアの担当者の方に一連の説明を受けた時点で私の古い常識は完全に覆りました。

現在国内のボードゲームパブリッシャーの中でも、ニューゲームズオーダーは一面的に有数の「原始的な」会社(色々な点で変わらない、変えない会社)であることは自覚していまして、そして反面それは売りでもあると考え、改める予定も無く15年以上(本当におおもとから遡ると30年とか)やってきました。ただ全ての出版タイトルでとは行かないものの、いくつかのゲームは万単位の部数をこれまでに出荷してきておりますから、それはつまり「どう考えても自分たちが知らない範囲、遠く遠くにまでリリースしたゲームは届いている、届くようになった」ということは(実相としてどういう感じなのかわからないままではあるものの)理解はしている所です。

私自身はオンラインでボードゲームを遊んだことは無いので、さてオンラインでボードゲームを遊んでどういうことになるのか?面白いのか?ということについては、正直存じ上げません。ドイツボードゲームは対面してこそではないのかな、というのが起点のポジションではありました。対面して遊び競ってこそ生じる独特の面白さこそドイツボードゲームの魅力の根幹ではないかという。

ですから、オンラインで、ココフォリアで遊ぶボードゲームは、対面して遊ぶそれらとは、また異なるアクティビティではあるのだろうとは、依然思っています。一方現実として、ココフォリアというプラットフォームがあるからこそ制約や問題(空間や時間、はたまた人間関係ですとか)を乗り越えてロールプレイングゲームがプレイできている、生活の中に実際に組み込めて楽しめている、という方々が沢山(本当に自分の常識からすると莫大な人数です)いらっしゃるというお話を担当者の泉川さんから伺った時、「これは根本的に考え直した方が良いな」と思いました。そもそも何千何万部という単位でボードゲームを販売していく時、それはオンラインでなくオフラインであろうとも、自分達が思い描くゲームが売っていった先々全てで生じているわけでは無い、まず間違いなく、ということは、ずっと承知の上でというか覚悟の上で、「いやそれでも出していこう」とやってきたわけですので。自分達の思い描く「こういうドイツゲームを、こんな感じで遊んでもらえたら最高なんだけどな」という感覚と、現実には距離感はあり、その上で、その距離を近づけられたらと思って一つ一つゲームを出してきました。ですから、ココフォリアで私たちがゲームを出すことが、その距離をまた異なる方法で近づけることに繋がるのであれば、私たちのゲームがまた新たな領域で役に立つのであれば、それはアリだなと、今新たにそう思って発売させていただきました。

第一弾を「コヨーテ」で、というのは、第一には勿論ココフォリアさんからの指名、というのもありましたが、私の想像の中でも、ココフォリアのプラットフォーム上、プレイ環境を考えても最適のゲームの一つだろうと思えたのは大きいことでした。リリースタイトルを選ぶ上で、オフラインで遊ぶのとは別に、オンラインで遊ぶのに向いているかどうか?というのは確実に重要で、都度慎重に考えなければいけないだろうと思っています。

…オンラインでリリースする契約上の許可が下りるかとか、契約条件がどうかとか、さて出したとして売れるかとか、そういうハードルも多々存在するのですけどね。考えている中でも既に「出したいんだけど無理そう」なゲームもあれば、「出せるんだけど出すべきなのか怪しい」ゲームもある。ただ商業的な都合だけで出していって、いざ買って遊んでみたらオンラインではいまいちだった、何なら満足に遊べなかったという事だけにはならないようにせねばと思っております。コヨーテは、お互いの表情見えてなくてどうか?と思ったのですが(人によってはお互いの顔は別アプリで表示してココフォリアと併用で遊んでいる、といった場合もあるのかもしれませんが)、ココフォリアの利用では一般的と聞いたボイスチャット併用ベースでもコヨーテは行けそうな気がする、という結論でリリースしています(テキストチャットだけだとどうなのか、いやそれでも行けるのか、そこは不明ですが)。オフラインとは別のゲームになる、ということはそれは勿論あり得るのですけど「これはこれで面白い」「これはこれでこういうコヨーテ」となるならそれはやっぱりアリだなと思いますので、そうなれば良いなと願いつつ、好評を願いつつ、次にココフォリアに向いていると思われるゲームの選定をしていきたいと思っております。ゆくゆくは「ココフォリアはドイツボードゲームを遊ぶのにも良いよね」という状況に持っていければ良いなと思いますし、そこで知っていただいたタイトルが物理版の認知と売り上げの拡大にも繋がっていったら理想です。今の所皮算用かもしれませんが、思うにココフォリアに向いている可能性の高い(ルールが短い、プレイ時間が短い、コンポーネントがシンプルで表示がしやすい、面白いゲーム、便利なゲーム)をニューゲームズオーダーが数多く担当しているという自負はありますので、物理版リリースと並行して、考えてまいります。既にココフォリアを活用されているプレイヤーの皆様も、「知らなかったけどこの機会にココフォリアインストールしてみようかな」という皆様も(有料会員の枠組みもありますが利用自体は無料でも可能だそうです)、よろしくお願いいたします。

キャント・ストップ2026年版リリースについて、振り返りと評価。

さて、夏も盛りの8月となり気付かないうちに行った仕事が過去になっておりますが、先日リリースさせていただいた「キャント・ストップ2026年版」についてのお話をここでしておりませんでしたね(YouTube配信で大方話したのでそれで済んだ気持ちになっていた)。まあニューゲームズオーダーでのキャント・ストップの取り扱い自体は長く、かれこれ10年以上担当しているので、今回のも外から見るとアップデートくらいのお話ですが。しかし一応自分としてはこの2026年になってようやく一つ、落ち着ける形を作れたかなという気がしています。

ご存じの方も多いとは思いますが、今回のバージョンのアートワーク(ママダユースケ氏のものです)は、我々としては「2個前」のバージョン(2016年版)を基本としています。ニューゲームズオーダーとしての初めてのオリジナルのキャント・ストップ出版だったものですね。ただ今回と異なり、2016年版のボードは布。箱は横長で、ニューゲームズオーダー創業当時の標準サイズでした。改版するたびに多くのタイトルをさらに小型化していったため、今となっては現行で踏襲しているタイトルが減ってきているのですが…セネターズ等のサイズですね。当時はこのサイズでも大幅な小型版キャント・ストップで、最大の特徴としては、国内で作った布製ボードを採用していました。布ボードは箱に収めるには非常に優秀ながらいささかコスト高ではあったのですが…それでも「今までと異なるキャント・ストップ」というアピールをする上でも「布は布で良いな」と感じていただけるのではないか?と当時チャレンジしてみた仕様でしたね。国内でのスピーディな生産を念頭としており、ボードゲームではよくある四つ折りボードを国内で安価に作るのが難しい、ということから選んだという側面もありました。

この2016年版キャント・ストップの在庫が何度目かの品切れをし、権利元のfranjos社にまた増産させてもらいたい旨連絡した所、先方から「次はfranjosが欧州での生産をやめ中国生産でキャント・ストップを作るので、その生産に一緒に乗って欲しい」との要請がありました。結構侃々諤々と交渉したのですが結果としては同意し、2023年にfranjos生産による日本語版をリリースしました。青い箱のもの。作りとしてはベーシックな四つ折りボードとコマ、ダイスのバージョンでしたが、私としては2016年版を好調に売り続けられていただけに、「これがきっかけで売上が落ちたらいやだなあ…」という危惧は小さくありませんでした。ただfranjos版にはプラスポイントもあって、一つにはしっかりと小さめの正方形箱になっていたこと。もう一つは価格が2700円と、2016年版の3500円よりさらに下げることが可能になった点でした。元々思い入れも手応えもあったアートワークを捨てて、より高価格なバージョンへ移行だとだいぶ辛い、というか同意できなかったでしょうが、「それなら」と権利元の事情を受け入れた次第です。ここでキャント・ストップを手放してしまうのがよりマズい事態に繋がることもあるよな、という判断もありました。

そしてこの2023年版在庫を完売でき、さて増産…ということになったのですが、元々franjos社は各国語版を同時生産するタイミングで彼らのバージョンを生産するメリットを試したかったということなので、こちらの増産とタイミングが合うわけもなく(多言語版生産あるあるですが)、気が済んだのか…という言い方をするとなんですが、次の日本語版増産については生産のイニシアチブを再びニューゲームズオーダーに戻すことに同意してくれました。ということで今回の2026年版リリースに至ったという事です。この3年間の間の社内外の状況の変化、最新状況への対応として近年蓄積したノウハウを反映してこのバージョンを作れた、とある程度の手ごたえを持っております。

前述の通りママダユースケ氏のアートワークを復活させる、というのは最初に決めた訳ですが、仕様については、ドラダ以来進めてきた近年のニューゲームズオーダー仕様を採用し2016年版をアップデートしました。一つには箱サイズで、これはドラダ箱の長辺を一辺とした正方形箱にし、厚さもドラダと同じ。ボードについては四分割のパズルボードにして、2016年版の布ボードとほぼ同じ盤面を作りました。コマも2016年版と同じサイズですが、カラーについては調整し、よりアートワークに合うようにしました。沢田にも「思った以上に箱薄いねえ」と言われたのですが、結果的にはこの仕様もご支持いただけたようで、現在好調な売れ行きを達成できております。「やっぱり名作キャント・ストップ、とにかく根強い」というのが第一の感想ではありますが。この仕様と箱の薄さ(体積の小ささ)で、2023年版と同じ2700円での販売を可能にできたのが、何より良かったことかなと思います。この時点の改版で再び3500円になるのは販売上も難しくなる可能性があると思っていたので、「さらりと2700円を維持する」というのが一番頑張った部分ですね。

と、以上の通りです。お陰様でニューゲームズオーダーのここ数年の小箱名作ラインナップに一つ、頼もしい仲間が加わりましたよということで、キャント・ストップ2026年版、引き続きよろしくお願いいたします。

魔法にかかったみたい日本語版について、諸々の事情や思っていることです。

ということで「魔法にかかったみたい」日本語版について3月26日、発売させていただきました。ここでは、今回の日本語版リリースについての様々思う事をお話させていただいておこうと思います。足回りを知りたい熱心な方はご一読ください。

●発表とリリース日
何故発表が発売直前になったのか?と申しますと、一つには弊社倉庫に着荷したからです。直前すぎるだろうという感じもありますが、我々としてはどうしても、実際に無事に荷物が来て、あらかた潰れてもないことを確認してからでないと言いたくないなと思ってしまう部分があるのですよね。ホント生産も輸送も、何があるかわかりませんから。自分がやらかすかもしれないし印刷工場がやらかすかもしれないし輸送業者がやらかすかもしれないし。発売日とかプロモーションとか十重二十重に設定して各方面に周知した後ぜーんぜん来ませんとか、販売不可能なやつが来ましたとか、みたいな事をやらかした時のダメージを考えますと、初動が多少落ち着く形になっても直前告知、そしてすぐさま受注開始、という感じで今後も行きたい気がしています。全体のことはわかりませんが、私達は一個一個要りそうな物を出版しているのでこれで事足りているし、あんまり先回り先回りでプレイヤーの皆様の未来のお小遣いにツバ付けていくのも大概にした方が良いんじゃないかと思っている所もあります。結果として「ある程度のお小遣いがある方なら悩まなくても気分良く買える位の価格帯」という立ち位置で何とか踏ん張っていきたいなという元々の動機に立脚していたら着地がこうなりました。あともう一つの事情としては、出版契約上2026年4月がリリースしなければいけない時限でして…色々と念を入れて作っているうちにまたしても締め切りギリギリになってしまいました。昨今の国際情勢、輸送コストの話など本当に肝が冷える所がありましたが、無事弊社倉庫に入ってくれて感謝感激です。

●基本、拡張の価格と結果的な仕様について
先日ニューゲームズオーダーのXにて発表させていただいた所、有難いことに大きなご反響をいただけ、また「安い!」といったお声もいただきました。
この2026年に「安い」というお声をいただくというのはなかなか無い。2000円台って正気ですか、というのは一方のアタマでは私自身思っているのですが、これは総合的に判断してやはり最善手という結論になっています。まずなんですが、生産コスト的に可能なのか、という点で言うと、これはモダンアートの時もラーの時も言ってますが「十分可能」です。ニューゲームズオーダーの基準としては、現段階の一回あたり生産部数でも全然まともな利益率がある形で作れています。このドル160円での円安時代でもなお…いやホントこれ以上の円安は勘弁してくださいあと輸送費用の増大も勘弁してくださいという気持ちは切実にありますが。現時点ではしっかり合格点を出せてますし、出したゲームがよりケタの違う人気を得られた暁には一回あたりの生産数が増え一部当たりコストは抑えられ、利益も各段に上がり得るとは言えます。…そんな上ぶれ起こるわけないじゃない、界隈のゲームの価値の分かる愛好者の数なんて令和の世でも結局そう増えちゃいないんだから、という前提に立ちますと「顔の見えてる近場の皆様から多めにいただけ」というディフェンシブな高価格設定に向かっても当然妥当なのですが。天下の魔法にかかったみたいの出版を15年以上もかけて実現できる段になってのその逃げ腰はちょっと流石に寂しくないかということで「一般層にだって響くかもしれないじゃないか!」「面白いドイツボードゲームの面白さだって今や意外と伝わってるかもしれないじゃないか!」という仮説に立って2700円です。流行るから売れて安くできるのか、安く出したから流行に火がついて伸びていくのか、というのはタマゴニワトリ、こちらとしてはそれが始まり得る投げかけで今回も始めますという話です。ボードゲームが1万円でも2万円でも買ってくださる方というのは、ボードゲームを買い慣れまた遊び慣れていて、自分の出費の判断に自信がある方なんだと思うのですよね。ただ、その既に「自分はボードゲーマーで、面白そうだと思えばいくら高くても当然買う」という人数というのは、どれだけ「ボードゲーム人口」が増えても、そう増えるものではない。自分達が見据えているのは「ボードゲームを買ったことが無い方が自律的に買い始めてくださるか?」という所ですし、その買い始めの初期にお勧めしたいゲームを出しているということです。「試しに買ってみたらめちゃめちゃ面白かった!」と感じていただけるのかどうかという所を引き受けたいですよという気持ちです。一方で1万円でも2万円でも買って下さる皆様は2000円台日本語版なんてもう当然買ってくれるというか買い直してくれるというかカートンで買って配ってくれるんじゃないかという厚かましい期待…いや真面目な話をすれば、改めてご自身で買わなくても「あれは良いやつだよ」と一言言ってくれるだけでも全然有難いです。

さてそれもあって、と言いますか、基本2700円との比較で言いますと拡張1700円はジップ袋入りにしてはちょい高設定にはなってるかと思います。基本安めで拡張高め、には正直させてもらいました。ここまで言えば意図はわかると思います。この拡張ルール四種に関しては…バカ正直に書かせてもらっちゃいますが、なかなか複雑な思いを持ってのリリースになっていまして。拡張セットの構成としては「6人プレイ」「アミュレット」「さらなる力」「煮え立つ万能薬」の四つとなっているのですが、この四つの拡張に対する私達の率直な感想は、

・6人プレイ…有用。プレイ時間が延びるものの6人で遊んでもちゃんと面白くなる
・アミュレット…特に3人プレイに向いているとのことだが…「有ってもいいけど」くらい
・さらなる力…正直、蛇足ではないかな…。NGO的には望ましくない拡張
・煮え立つ万能薬…無料配布されたポストカード拡張だっただけありまさしく粗品。あってもなくてもどちらでも、という感じではあるけど入手できてなくてやけに気になるんですけど!という皆様が確認できるというサービス一点突破

こんな感じだったものですから、あらゆるパターンを考えました。まずあったのが「全部入りの一商品にして出す」。これはだいぶ本気で想定しました。あと「基本に6人用カードまで入れて、残りを拡張としてより低価格化して出す」。このバリエーションで、「6人用カードを基本に入れて、残りの拡張は出さずに忘れる」というのも…。ただどれも、もう一つでした。6人用カードだけは有り無しで言えばあった方が良いだろうと思ってはいたのですが、他の拡張は基本に入れてしまうと「慣れてきたら拡張を入れた方が良い」というミスリードになってしまうなと。そういう誤解をうっかりしてもおかしくない一般層のテーブルにまでこのゲームを届けようとしているだけに、それは避けたかった。とは言え6人用カードまで基本に入れてしまうと、残りの拡張3種をまとめた商品を作る時の自分達のモチベーションが危ういというか…「これは出さない方が良かったのでは?」みたいな疑問を持ちながら販売したくないなと思った所です。あと6人用カードは有用とは言っても「いや6人で遊ぶシチュエーションは僕は全く無いですけど」という人も当然多くいらっしゃるだろうし、基本セットの説明書に6人プレイ時のちょっと違う準備のことを書くのもイヤかなというのもありました。結果として拡張セットは「まず6人で遊ぶことがある人にはニーズがある&過去に発表されていた拡張ルールについて一通り確認でき『遊べる』状態にはしておける」という位置づけにしました。特に「煮え立つ万能薬」については未入手の方は多かったでしょうから(ルール見ると「なーんだそれだけのことか」という良くある追加得点要素なんですが)、「こんなんでした、一応入れておきますね」という感じです。「これだけ無いもんだからどうも座りが悪かったんだよね」という方向けになっております。この拡張で行けるかなという決め手になったのはジップ袋入りのパッケージで、基本の箱に一緒に収められることを確認した時でしたね。販売手法についてはラーの木製駒の時点でその後の魔法にかかったみたいについて考えてまして、何とか行けそうかなという感触を得ていましたが、今回の拡張についてはラー駒と異なり一般出荷もしております。出荷先の店頭でラーの本体だけ売り切れてラー駒だけが棚に残留…となったらどうにも良くないだろうと思っていたのですが、逆に拡張については、弊社通販に限ると、店頭で「拡張は在庫無いですか?」と店員さんが質問される事態が多発してストレスがあるだろうなという想像から卸も行っています。

●基本セットの販売目標部数
先日配信でもお話しましたが、この「基本2700円、拡張1700円」としたことにはより大きな決め手がありました。それは今回の(代理者であるホワイトキャッスル社との)日本語版出版契約の条件に「年間最低販売部数」というものがあったことです。これはつまり「一年間のうちに○○部以上販売できなかった場合、権利者側が即座に契約終了する選択肢を持ちます」という…。勢い込んで「待望の日本語版出版!」と申し上げているのですが、その割に年内の売り上げがそこそこに終わってしまいますと、「いきなり販売終了!もう取り扱い終わりました!」というあっという間のゲームオーバーになってしまう可能性を実は含んでいる。加えて言えばこの目標部数、率直に「なかなか多い」。交渉の結果として、先方から早々に「では最低二年は保証します、二年連続で年間○○部売れなかったら、としましょう」とは言ってもらえたので、とりあえず2027年いっぱいまでは販売できることにはなっているのですが。でも新発売した今年2026年よりも2027年に沢山売る、ってなかなか難しくないですか(笑)。となると、まずはとにかく今年ガーンと売って、何としても初年度の最低販売部数をクリアしなければ!というのが、まさに内幕の話にはなりますが私吉田の直面している事情です。今年目標部数に達すれば最低3年間の販売期間は保てますので。勿論「契約を切ることができる」であって「必ず切られる」という訳では無いですから、それこそ達成できなくても近い所にまで売り上げ部数を持っていければ終売を回避できる可能性は高まるとも思っています。契約できる方向になり、提示された条件を確認し、販売価格や仕様等々私達の意図を全面的に反映できる、かなり有難く納得性の高い契約内容だったのですが、唯一にして最大のハードルがこの条件でした。とにかく交渉して生存の幅、自由度を広げねば…ということで、「拡張セットの部数を売上部数に合算して良いですか?」「最低売り上げ『金額』にすることは可能なのですか?」といった質問を投げた(この話の時点で拡張セットを別売りすることはほぼ決めざるを得ない部分でした)のですが、ここに関しては一切のブレは無く「いえ、基本セットの売り上げ部数で判定します。これは動かせません」というご返答。それはそう。わかる。正しい。

…となりましたらね。「基本をとにかく沢山の部数売る必要がある」んだから、「基本セットの価格を安く設定する」というのはある種当然になるわけです。それも「明確に部数増の力になる」レベルの価格設定。基本と拡張の全面分離も決まり。可能な限りの小箱化も決まり。あと、目標年間販売部数を「超える」初版部数の生産も決まり。最悪でないのは、そもそも私が今回の出版で目指したいことと、求められている方向性が完全に一致したことでした。「価格を高め設定して高収益化」という路線は、この条件と向き合ったらほぼ自動的に絶たれていたのですね。勿論「2年だけ売ってお終い」とまで割り切れば、それも可能でしたが…まあ当然選びませんでした。私としてはこの「魔法にかかったみたい」は広く遊ばれて楽しまれる所に行ける、最高のゲームだと確信するからです。ホントにそうなるのか、現実にそう持っていけるかは時の運ですが!ただ、そこの率に賭けてみたかったし、賭けられはする格好にはなったということです。幸いにもというか、この円安状況の中でも何とか2000円台後半にできる生産が実現でき(高い販売部数目標が必然的な初版部数に繋がり一部当たりコストがしっかり下がったとも言えますが)、生産完了→輸送→発表→即発売、となったということです。リリースから約2週間。お陰様で、既に沢山の方にお買い上げいただいています。有難うございます。さらにさらに沢山の方にお届けする必要がありますが(笑)!そして何より嬉しいのは、今の所、大きな生産の失敗、印刷不良や広範な内容物不足などは、起きていないようです。良かった(内容物の不足などございましたらメールにてinfo@newgamesorder.jpまでご一報ください、不足物発送対応いたします)。ということで、魔法にかかったみたい、なにとぞよろしくお願いいたします!