毎度ながら、前回から間が空いての更新になりました。先日発売したドラダがお陰様で予想以上のご反響をいただき、本日弊社の初版在庫が完売となりました。しばらく前からは既に再生産の方針決定や手配にあたっていました。ドラダの復刻仕事、今のところ何とかなった模様で!有難うございます。
実際発売直後の手応えから近日の完売は予感されていました。ただ早々の再生産も手放しで喜べるほど易々と行くものではなく、ボードやコマのクオリティキープや数量の確保などの部分で骨が折れております。余裕のある製品リリースでない場合ままある事ですが、最初期はどうしても生産に不安定さを残さざるを得ず(言い方はなんですが即興的な要素が出てくるところがあります)、売りながらそれを整え定めていくことになります。商品が思うように売れず初版在庫で足りてしまうようなら、とにかく一度作り終えさえすれば生産体制の課題など棚上げにできてしまいますから、増産時の安定化は売れてるからこそ生じてくる仕事。なので望ましい苦労の範囲ではあります。売れてさえいれば、大抵の場合は規模の拡大も、追加コストを費やしてのクオリティの安定も目途は立てようはあるのですよね。これを、未だ出してもない、どれだけ売れるか見込みもない段階で盤石の品質や生産体制などを求めてしまいますと、そのコスト感に雁字搦めになり、往々にしてにっちもさっちも行かなくなってしまいます。製品の原価というのは煎じ詰めると「ボードゲームを最終的に得る購入者お一人お一人が支払っている」もので、自分はその使い方を代理で決め、立て替えで支払っているだけという意識があります。お一人お一人の好みを聞いて回るわけにはいかないので、そこは最大公約数を求めていくのですが。「皆さん大体こういうことは大事にして欲しいと思ってそうかな~」とか、「こういう所は頑張っても喜ぶ人あんまり居ないよな~」とか、「こういう所で手を抜くと皆さんすごく気にするのよね…」とか。「総体として、こんな感じでどうですか?」と、各要素を見繕って組み合わせてお出ししていて、それに対する返答が売れ行きに現れてくると。「ああ、それなら買いますわ」と何回思ってもらえるのか。先ほど予想以上、と言いましたが、「予想していた範囲の天井辺り」という方が正確かもしれません。「上手く運べばこうなる、こともある」という成功のイメージは、もちろんしていたからです。そのイメージは最初から持っているもので、それが全くできてこなかったら流石にゲーム製品作りは進められませんよね(笑)。
ともあれ前回の話に戻りましょう。ドラダの権利所在を探し求めて三千里、息子さんだラベンスバ―ガーだハバだと聞き回った結果、ダメ元でルディ著作「カフェ・インターナショナル」を現行取り扱いしてるアミーゴ社に「ルディのゲームの権利管理者ご存じないですか?」と連絡を取った所まででした。
アミーゴから返答があったのは、今見返しましたが私がメールを送った40日後でした。当然ながら「やっぱり脈無しか~」と思ってからも時間が経った頃だったんですが、返ってきたメールを読んでみると相当な手間を取って状況を調べていただいたのが読み取れ、それがまず非常に有難いことでした。私が送ったメールはそう長い物では無かったですが事務的なメールというわけでもなく、「ドラダはもう一度出版されるべきゲームで、これはボードゲーム文化における問題だと考えています」と書いた所に振り返ってもらえたのかな?という気もしました。ただアミーゴからのメールは「多くの人と話しましたが、状況は相当難しいようです」という書き出しでした。調べていただいた所によればルディのゲームの権利は彼の没後三者によって管理されていて(そのうち一者は息子グイドーさん)、ドラダをキープしている可能性が最も高いのは妻のエリザベスさんだが、彼女は老人ホームに入られてる上ルディ著作の出版事業を行うことを望んでいない、あとおそらく英語話者じゃない…という。まずい。メールなら最悪ドイツ語でも何とかするけど、そもそもメールのやり取りができる感じがしないし、それ以前に「出版したいと思ってない」が致命傷じゃないかと(笑)。エリザベスさんの手元にある、お蔵入りしているだろう大部分のゲームリストの中にドラダが入っていたら、こーれはまずい。
ただポイントは、伝えてもらったもう一者の存在でした。スマートクッキーゲームズ。
アレックス・ランドルフ著作などの権利を管理していてルディの権利にもいくらかアクセスしている団体、と(私は初めて知りました)。ウェブサイトを確認してみると、NGOとすんごい馬が合いそう。商業<文化、という佇まいが有難い印象でした。
「まずはスマートクッキーに連絡してみたらどうですか」という有難い助言をいただき、「そうしてみます!」と返答即スマートクッキーにメール。というか他の手が無い(エリザベスさんの連絡先とか無いわけで)。
すると程無くいただいたお返事がこちら↓
「2022年以降、私たちはエリザベス夫人に代わりルディ・ホフマンの権利を管理しています。ドラダ日本語版出版のオファー、嬉しく思います」
来たわ!!
2022年以降…ということは、スマートクッキーがエリザベスさんと話を付けてくれたのは私がドラダを探し始めた後だったということになります。タイミング良かった。しかしながら、
「ただしドラダの権利状況は依然少し複雑で、現在出版権は依然『お宝はまぢか』として出版していたハバ社にあります」
あっ…、やっぱまだハバが握ってたか…。
「ただ契約期間はまだ残っているもののハバ社には今後販売の意思はなく、契約は終了となり我々の元にドラダは戻ってくる予定です」
おっ。
「ではその契約期間はいつまでか?…2024年の5月です」
来たわーーー!!
即座に「全然待てます。ハバ社からドラダの権利が返還され次第、直ちに弊社と契約お願いします!」と挙手し、ドラダの出版権がニューゲームズオーダーに確保されるに至った次第です。正直ラッキーが重なりましたね…(笑)。粘り強く行かなければ目は無いとは言え、行ったとてねえ、という所もありましたが、今回については棚に戻された瞬間のドラダを気合で掴めた恰好でした。
ということでドラダの権利探しについてざっくりとお話したのですが、権利取って終わりじゃない、というかそれでやっとスタートできるのがボードゲーム出版ということで、もう一回今回のドラダ日本語版制作について後日ブログを書こうかなと思っております。また時間置いてしまいそうですが!そんな遠くなく書けるように致します(笑)。